七　指令第二號
一九四五年九月三日
第一部　總則
イ　日本帝國政府及日本帝國大本營ハ茲ニ本指令ニ揭グル聯合國最高司令官ノ要求ヲ各場合ニ從ヒ自ラ遵守シ又ハ之ガ遵守ヲ確保スルコトヲ指示セラル
ロ　本指令竝ニ之ニ基キ必要ナリト認メラルルニ至ルコトアルベキ日本帝國政府及日本帝國大本營ノ敷衍的訓令ハ日本國本土竝ニ對馬島、北緯三十八度以南ノ朝鮮及琉球諸島ヲ含ム隣接沿岸諸島ニ在ル日本國ノ及日本國ノ支配下ニ在ル軍隊竝ニ當該行政機關ニ適用セラルベシ
ハ　本指令ニ依リ課セラレタル要求ハ其ノ適用範圍內ニ於ケル指定目的ニ付聯合國最高司令官ノ占領軍ノ迅速且秩序アル保駐ヲ容易ナラシメ且確保スルコト竝ニ降伏條件ノ秩序アル遵守ヲ確保スルニ必要ナリト認メラルル日本國軍隊ノ武裝解除及復員ニ對シ一定ノ統制ヲ設クルコトヲ目的トス
ニ　追加要求事項ハ前記目的ヲ達成スル爲必要ナリト認メラルルニ從ヒ時々之ヲ課スルモノトス
二　イ　本指令ニ使用セラレタル「日本國軍隊」ナル語ハ一切ノ日本國ノ及日本國ノ支配下ニ在ル陸軍及海軍ヲ謂ヒ其ノ空軍、補助機關及準軍事組織竝ニ前記ノ何レカニ依リ雇傭セラレ又ハ之ニ附屬スル一切ノ者ヲ含ム但シ普通警察ヲ含マザルベシ
ロ　本指令ニ使用セラレタル「聯合國代表者」ナル語ハ占領軍指揮官又ハ聯合國最高指揮官ノ委任ニ基キ行動スル下級指揮官、參謀將校若ハ機關ヲ謂フ
三　聯合國最高司令官兼合衆國太平洋陸軍最高司令官ハ本指令ノ一部ト看做サルベキ附屬書「甲」タル地圖ニ詳細ニ示サルル日本國國土竝ニ北緯三十八度以南ノ朝鮮ノ諸區域ニ於ケル占領軍指揮官ヲ指名セリ右指揮官ニ依リ若ハ其ノ委任ニ基キ發セラルル一切ノ命令及訓令ハ示サレタル區域內ニ於テハ聯合國最高司令官ノ權限ニ依リタルモノト看做サルベシ
四　聯合國最高司令官ノ權限ニ依リ發セラルル一切ノ布吿、命令及訓令ノ正文ハ英語ニ依ルベシ日本語ノ飜譯文モ發セラレ相違發生スル場合ニ於テハ英語ノ本文ニ據ルモノトス發セラレタル何レカノ訓令ノ意義ニ關シ疑義發生スルトキハ發令官憲ノ解釋ヲ以テ最終的ノモノトス
五　日本國軍隊ノ一切ノ機構、軍隊又ハ分隊ノ指揮官ハ聯合軍代表者ニ依リ發セラレ且右日本國ノ指揮官ノ責任ノ範圍內ニ於テ適用セラルル訓令ノ迅速且完全ナル遂行ニ付個人的ニ責任アルモノト聯合國最高司令官又ハ當該占領軍指揮官ニ依リ認メラルベシ
六　別段ノ明示ナキ限リ本指令ニ揭グル時間制限ハ日本帝國大本營ニ依ル本指示ノ受領ノ時ヨリ起算セラル要求セラレタル報吿ハ英語ニ依リ提出セラルルモノトス
第二部　日本國軍隊
一　日本國大本營ハ附屬書「甲」タル地圖ニ示サルル所ニ從ヒ管轄ノ境界ヲ日本國第一總軍ニ付テハ合衆國第八軍ト符合セシムル樣又日本國第二總軍ニ付テハ合衆國第六軍ニ符合セシムル樣遲滯ナク調整スルモノトス
二　イ　日本國第一總軍指揮官ハ合衆國第八軍ノ責任區域ヘノ占領軍ノ進入ニ關スル訓令ヲ俟ツ爲東京區域ニ在ル合衆國第八軍指揮將官ニ依リ指示セラルル時及場所ニ於テ右指揮將官ト自ラ連絡スルモノトス
ロ　日本國第二總軍指揮官ハ合衆國第六軍ノ責任區域ヘノ占領軍ノ進入ニ關スル訓令ヲ俟ツ爲合衆國第六軍指揮官トラジオニ依リ遲滯ナク連絡スルモノトスラジオニ依ル最初ノ連絡ハ聯合國最高司令官ノ施設ニ依リ又爾後ノ直接連絡ハ合衆國第六軍ノ指揮官ガ指示スル所ニ從ヒ行ハルルモノトス
ハ　京城ニ在ル日本國第十七區域指指揮官ハ豫メ日本帝國大本營ニ傳達セラルル訓令ニ從ヒ北緯三十八度以南ノ朝鮮ヘノ合衆國占領軍ノ進入ニ關スル詳細ナル訓令ヲ俟ツ爲朝鮮合衆國軍隊指揮官（合衆國第二十四軍團指揮官）ト連絡スベシ
ニ　日本帝國海軍軍令部總長ノ先任代表者ハ合衆國海軍部隊ノ日本國本土及朝鮮ノ水域及海軍建造物ヘノ進入ニ關スル訓令ヲ俟ツ爲聯合國最高司令官ノ東京區域ニ在ル指定海軍代表者ニ依リ指示セラルル時及場所ニ於テ右代表者ト自ラ連絡スルモノトス
ホ　琉球諸島ニ在ル日本國指揮將官ハ合衆國軍隊ニ依ル右諸島ノ占領ニ關スル合衆國第十軍指揮將官ヨリノ直接訓令ヲ適當ナル時ニ於テ受クルモノトス
三　日本帝國大本營ハ要求アリタルトキ聯合國最高司令官ニ對シ左記ヲ提出スルモノトス
イ　日本帝國大本營ノ竝ニ其ノ一切ノ部、局及機構ノ現位置ニ關スル詳細ナル情報、位置ハ縮尺十萬分一ヨリ小ナラザル地圖上ニ正確ニ之ヲ標示スルモノトス帝國大本營ノ部、局及機關ノ完全ナル公ノ名稱及宛先ハ右ノ各ノ部、局又ハ機關ノ先任將校又ハ官吏ノ姓名及擔任事務又ハ官職ト共ニ之ヲ示スモノトス
ロ　師團及獨立旅團竝ニ右ニ相當スル海軍部隊ニ至ル迄ノ指揮系統ヲ示ス日本國軍隊ノ詳細ナル組織圖
四　日本帝國大本營ハ各總軍、區域軍、軍、師團、獨立旅團（一切ノ種類ノモノ）及獨立聯隊（一切ノ種類ノモノ）竝ニ右ニ相當スル海軍部隊ニ關スル左ノ情報ヲ聯合國最高司令官ニ對シ遲滯ナク提供スルモノトス
イ　名稱竝ニ暗號呼出名及番號
ロ　本營ノ特定ノ位置
ハ　指揮官ノ姓名
ニ　原隊ノ所在地
ホ　組織上ノ兵力表
ヘ　現兵力（兵力ノ報吿ガ受領セラレタル最近ノ日ニ於ケルモノ）
五　イ　日本國軍隊ノ武裝解除ニ關スル「一般命令第一號（陸、海軍）」第一項ノ規定ノ實施ニ關シテハ日本帝國大本營ハ日本國軍隊ニ依ル右武裝解除ノ完全且無條件ノ履行ニ付引續キ責ニ任ズベシ
ロ　占領軍ヘノ武裝ノ引渡ニ關スル詳細ナル訓令ハ左ノ者ニ依リ當該日本國指揮官ニ對シ直接與ヘラルルモノトス
（一）　合衆國陸軍ニ依リ引取ラルル彈藥手持品、日本國陸軍ノ武器竝ニ海軍艦船及商船竝ニ其ノ武器ニ付テハ各自ノ責任區域ニ於ケル合衆國第八軍指揮將官、合衆國第六軍指揮將官及朝鮮派遣合衆國軍隊指揮將官
（二）　合衆國海軍ニ依リ引取ラルル海軍艦艇、沿岸建設物、需品及裝備ニ付テハ聯合國最高司令官ノ各指定海軍代表者
六　イ　日本帝國大本營ハ一切ノ日本國軍隊ノ迅速ニシテ秩序アル復員ヲ行フベシ
ロ　復員手續ハ復員部隊ノ監督、人員ノ除隊率及指定ヲ含ミ部隊ガ復員セラルベキ區域ニ在ル占領軍指揮官ノ監督ヲ受クルモノトス
七　日本帝國大本營ハ復員ノ終了迄日本國軍隊ノ維持及經理ヲ繼續スルコト竝ニ聯合軍代表者ニ依リ責任ヲ解除セラルル迄一切ノ記錄及文書ヲ維持シ及保存スルコトニ付責ニ任ズ
八　日本帝國大本營ハ左ノ趣旨ノ訓令ヲ發スベシ
イ　左ノ事業ハ遲滯ナク之ヲ完成スベシ
（一）　一切ノ港及碇泊所ニ於ケル防材ニ依ル一切ノ防禦施設ハ之ヲ開放シ且開放シ置クモノトス右防禦施設ハ十四日以內ニ之ヲ撤去スルモノトス
（二）　一切ノ港及碇泊所ニ於ケル一切ノ制御機雷原ハ之ガ連絡ヲ斷チ且無害タラシムルモノトス
（三）　一切ノ港及碇泊所工作物內ニ在ル一切ノ破壞裝置ハ之ヲ撒去シ又ハ無害タラシメ且其ノ位置ハ明瞭ニ之ヲ標示スルモノトス
ロ　一切ノ航海及航空ヲ便ナラシムル一切ノ施設ハ之ヲ復活ス右事業ノ完成ニ至ル迄ハ現在ノ戰時航路照明方式ハ之ヲ維持スルモノトス但シ一切ノ減光燈ハ全光度ヲ以テ之ヲ揭グルモノトス
ハ　一切ノ水先案內業務ハ引續キ之ヲ營ミ且一切ノ水先案內人ハ海圖ヲ携帶シ其ノ平常ノ職場ニ在リテ待機スベシ
ニ　海港及空港ノ作業ニ關係アル日本人職員ハ追テ指示アル迄ハ其ノ職場ニ留リ其ノ平常ノ任務ヲ引續キ遂行スベシ
ホ　一切ノ軍艦及商船ハ港ニ在ルト海上ニ在ルトヲ問ハズ直ニ一切ノ武器ヲ船ノ首尾線ニ副ハシメ之ヲ使用不能ナラシムベシ
九　日本帝國大本營ハ日本國ノ軍艦、補助艦、商船及他ノ船舶ノ一切ノ乘員ガ聯合國ノ各代表者ニ依リ課セラレタル任務ノ遂行ニ依リ別段ノ要求ヲ受クル者ヲ除クノ外追テ訓令アル迄船內ニ留ルコトヲ命ズベシ
十　日本帝國大本營ハ聯合國最高司令官ニ對シ遲滯ナク左記ヲ引渡スモノトス
イ　日本及朝鮮ノ水域ニ於ケル沿岸護送航路及探索濟ノ水路竝ニ浮標、照明燈及他ノ航海ヲ便ナラシムル施設ニ關スル詳細
ロ　日本國海軍省ニ最近報吿セラレタル海軍用彈藥手持品竝ニ汽罐（ディーゼル式、ガソリン使用及石炭使用ノモノ）ヲ含メル海軍用燃料手持品ニ關スル詳細ナル表
ハ　一切ノ病院船ノ位置、狀態及病床收容力ヲ示ス表
ニ　日本國本土及隣接諸島、琉球諸島、支那、朝鮮竝ニ日本人ニ依リ占領セラレ居ル他ノ地域ヲ包含スル一切ノ航海圖及航空圖竝ニ他ノ一切ノ種類ノ水路學出版物中最近出版ノモノ各十部
ホ　マリアナ諸島及カロリン諸島ニ關スル三角測量及潮汐ニ付テノ資料（データ）
十一　日本帝國政府及日本帝國大本營ハ聯合國最高司令官ニ對シ二十一日以內ニ左ノ地圖及書類ヲ引渡スモノトス
イ　日本帝國大本營、日本國參謀本部及帝國陸地測量部ノ權限ニ基キ發行セラレタル日本、支那、朝鮮、滿洲竝ニ日本國陸軍及海軍ノ軍隊ニ依リ占領セラレ居ル他ノ一切ノ區域ニ關スル一切ノ縮尺及種類ノ最新版ノ地形學的地圖各二部、地圖ハ縮尺別及區域別ニ各別ノ圖案ニ依リ之ヲ整理スベク且之ニ各圖葉ノ內容ヲ示ス圖解式索引ヲ附スベシ日本帝國大本營及其ノ從屬機關ノ所有スル右地圖ノ一切ノ追加圖葉ハ聯合國最高司令官ヨリ其ノ最後的處分ニ關シ追テ指示アル迄之ヲ安全ニ保管スベシ
ロ　日本、朝鮮、支那及滿洲竝ニ日本陸軍及海軍ノ軍隊ニ依リ占領セラレ居ル他ノ一切ノ區域ノ地形測量ニ關聯シテ建設セラレタル三角標及據黠標ノ測量上ノ位置及記述ノ一切ノ記錄各二部
ハ　日本國軍隊ガマニラ占領中ニ鹵獲シタルフイリツピン諸島ニ關スル一切ノ測量資料（データ）
十二　本指令ニ包含セラルル區域中ノ何レノ位置ニ在ルヲ問ハズ一切ノ機雷、機雷原其ノ他ノ陸路、海路及空路ニ依ル行動ニ對スル障害物ヲ明瞭ニ標示スル爲卽時ノ手段ガ執ラルルモノトス
十三　日本帝國大本營ハ一切ノ掃海艇ガ直ニ所所ノ武裝解除ノ措置ヲ遂行シ、必要ナル燃料ヲ補給シ且掃海任務ニ利用シ得ル如ク保存セラルルコトヲ確保スルモノトス
日本及朝鮮ノ水域ニ在ル水中機雷ハ聯合國最高司令官ノ指定海軍代表者ノ指示スル所ニ從ヒ除去セラルルモノトス
十四　日本國ノ一切ノ地雷、地雷原及破壞裝置、隱蔽爆發物、落下罠ヲ含ム其ノ他ノ障害物ハ之ヲ安全ナラシメ能フ限リ早期ニ之ヲ撤去スベシ右作業ノ完了迄ハ一切ノ安全通路ハ明瞭ニ之ヲ表示シ且之ヲ開放シ置クベシ
十五　日本帝國政府及日本帝國大本營ハ左記ヲ確保スルモノトス
イ　聯合國最高司令官ノ要求アルトキハ左記ニ關スル完全ナル情報ヲ提供スル爲準備ガ爲サルルコト
（一）　海底電線、無線電信、無線電話及無線放送施設ヲ含ム一切ノ對外國際電氣通信施設
（二）　北海道、本州、四國、九州、朝鮮及臺灣竝ニ琉球諸島及千島諸島ノ主要ナル地點ノ間ヲ連絡スル一切ノ長距離及幹線電氣通信施設
ロ　本指令ニ包含セラルル區域內ニ在ル一切ノ國際及國內電氣通信施設（海底電線、無線電信、無線電話及無線放送施設ヲ含ム）ハ現狀ノ儘之ヲ維持シ現在人員（陸軍、海軍及非軍人タルト陸軍、海軍若ハ非軍人ノ何レタルトヲ問ハズ）ヲ以テ操業ヲ續クルコト
ハ　情況ガ必要ナリトスル檢閲及監督ノ爲聯合國最高司令官ノ代表者ノ要求アル場合ニ於テ前記ノ施設ニ出入スルコトヲ得シムルコト
ニ　政府、非軍事、空軍、海軍、陸軍ノ信號通信機關ノ首席代表者ハ訓令ヲ受クル爲呼出アリタル場合ニハ聯合國最高司令官通信部長ノ許ニ出頭シ得ル樣爲サルルコト
十六　日本帝國大本營ハ聯合國最高司令官ニ對シ左記ノ情報ヲ提供スル報吿ヲ遲滯ナク提出スベシ
イ　日本國軍隊ノ健康ニ關スル詳細ナル記述
ロ　日本國軍隊ニ依リ支配セラルル野戰及固定病院ノ所在地表ニシテ各病院ノ位置及病床收容力ヲ示スモノ
十七　日本帝國政府ハ一切ノ都會自治町村及市ノ名稱ガ此等ヲ連結スル公路ノ各入口ノ兩側及停車場步廊ニ少クトモ六インチ以上ノ文字ヲ使用シ英語ヲ以テ揭ゲラルルコトヲ確保スルモノト■名稱ノ英語ヘノ轉記ハ修正ヘボン式（ローマ字）ニ依ルベシ
十八　日本帝國大本營ハ要求アルトキハ日本國軍隊ニ於テ使用セラルル徵集及除隊ノ方法ニ關スル情報ヲ入手シ得シムルモノトス
第三部　聯合國俘虜及非軍人被抑留者
一　イ　本指令ニ使用セラルル「俘虜」ナル語ハ日本國ニ依リ收容セラレ居ル左ノ一切ノ人員ヲ含ムモノト解セラルベシ
（一）　聯合諸國中ノ何レカノ軍隊ノ隊員タルカ若ハ隊員タリシカ又ハ右軍隊ニ隨行シ若ハ勤務スル者
（二）　聯合諸國ノ爲ニ勤務中日本國ノ占領セル國ノ軍隊ノ隊員トシテ日本人ニ依リ逮捕セラレタル者及千九百二十九年七月二十七日ノジェネバ條約（俘虜ニ關スルモノ）ノ條項ニ基キ右條約ガ日本國ニ依リ批准セラレ居ラザリシモ俘虜トシテ取扱ハルル權利ヲ有スル者
（三）　聯合諸國中ノ何レカノ商船隊ノ乘員タルカ若ハ乘員タリシ者又ハ右商船隊ニ勤務シ若ハ勤務シタル者
（四）　「俘虜」ナル語ハ嘗テ俘虜トシテ日本國ニ依リ收容セラレ居リタルモ日本國ニ於ケル又ハ日本國ニ依ル雇傭ノ代償トシテ俘虜タルノ身分ヨリノ解放ヲ承諾シタル者ヲ含マズ
ロ　本指令ニ使用セラルル「非軍人被抑留者」ナル語ハ千九百三十七年七月十日現在ニテ抑留セラレ居リタル日本帝國ノ國民タラザル一切ノ者ニシテ日本國政府ニ依リ抑留セラレ軍人タルノ身分ヲ有セザルモノヲ含ムモノト解セラルベシ
ハ　本指令ニ使用セラルル「俘虜及非軍人被抑留收容所」ナル語ハ一切ノ收容所、刑務所、船舶、宿舍、病院其ノ他俘虜若ハ非軍人タル被抑留者ノ監禁若ハ抑留ノ場所ヲ含ムモノト解セラルベシ
ニ　本指令ニ使用セラルル「收容所長」ナル語ハ日本國軍隊ノ一切ノ部隊、分遺隊若ハ他ノ單位部隊ノ指揮將校若ハ其ノ補助者又ハ俘虜若ハ非軍人被抑留者ノ收容ヲ擔任スル一般ノ非軍人看守長若ハ他ノ官吏ヲ含ムモノト解セラルベシ
二　日本帝國政府及日本帝國大本營ハ聯合國最高司令官ニ對シ未ダ提出セラレ居ラザル場合ニハ四十八時聞以內ニ左ノ情報ヲ提供スベシ
イ　前記一ニ於テ定義セラレタル俘虜及非軍人被抑留者ノ收容所ノ各ニ付左記ヲ示ス表
（一）　公式ノ名稱又ハ呼稱
（二）　最モ近キ顯著ナル地理的地點トノ關係的位置
（三）　度及分ニ依ル緯度及經度
（四）　俘虜及非軍人被抑留者ノ總數（適當ナル場合ニ於テハ總數中ニ含マルル女子ノ數ヲ含ム）
（五）　最モ近キ鐵道停車場ノ地理的位置
（六）　最モ近キ飛行場ノ名稱及地理的位置、各邊ノ長サ竝ニ滑走路ノ狀態
（七）　入院ヲ要スル俘虜又ハ非軍人抑留者ノ槪數
ロ　各收容所ノ位置ガ正確ニ記入セラレ居ル縮尺百萬分一ノ一葉ノ又ハ數葉ノ記號入地圖
ハ　各收容所ノ位置ヲ正確ニ示セル俘虜及非軍人被抑留者ノ收容所ノ各所在區域ノ縮尺十萬分一又ハ之ヨリ大ナル縮尺ノ記號入地圖
三　日本帝國政府及日本帝國大本營ハ本指令ヲ受領シタルトキハ利用シ得ル最モ迅速ナル方法ニ依リ各收容所長ニ對シ左ノ訓令ヲ發スベシ
イ　一切ノ俘虜及非軍人被抑留者ヲ最モ早キ機會ニ集合セシメ且左ノ聲明ヲ英語及要求セラルルコトアルベキ他ノ言語ニテ讀ムコト
「日本國ノ聯合國ニ對スル正式ノ降伏ハ千九百四十五年九月二日署名セラレタリ陸軍大將「ダグラス・マックアーサー」ハ聯合國最高司令官ニ任命セラレタリ聯合諸國ノ軍隊ハ能フ限リ速ニ日本國本土及朝鮮ノ占領ヲ進メツツアリ聯合國ノ俘虜及非軍人被抑留者ノ救出及奪囘ハ能フ限リ速ニ完遂セラルルモノトス
聯合國代表者ノ到著ニ至ル迄本收容所竝ニ其ノ設備、貯品記錄、武器及彈藥ニ關スル指揮ハ首席俘虜又ハ指定セラレタル非軍人被抑留者ニ引渡サルベク此等ノ者ハ爾後補給及管理ノ業務ノ維持竝ニ地方ノ狀態ノ改善ノ爲收容所長ニ對シ訓令ヲ與フルモノトス收容所長ハ首席俘虜又ハ指定セラレタル非軍人被抑留者ニ對シ其ノ指揮ヲ現狀ノ儘維持スルコトニ付責ニ任ズルモノトス
聯合國代表者ハ諸君ノ移轉及諸君ノ家庭ヘノ結局ノ歸還ヲ準備スル爲本收容所ニ能フ限リ速ニ派遣セラルルモノトス
ロ　後ニ明示セラルル職務ノ遂行上日本國ノ收容所官吏ガ使用スル爲首席俘虜又ハ非軍人被抑留者ニ依リ指定セラルベキ物件ヲ除キ收容所ノ完全ナル支配ヲ一切ノ設備、貯品、管理上ノ及他ノ記錄、武器竝ニ彈藥ト共ニ首席俘虜又ハ非軍人被抑留者ニ引渡スコト
ハ　左記ヲ確保スル爲首席俘虜又ハ指定セラレタル非軍人抑留者ノ監督ノ下ニ地方的ニ入手シ得ル政府又ハ軍ノ貯品ノ徵發ヲ含メ必要ナル管理及補給ノ業務ヲ遂行スルコト
（一）　日本國ノ軍隊又ハ非軍人人員ガ地方的ニ入手シ得ル最高ノ割合ニ相當スル一切ノ給食量
（二）　屆ク限リノ最善ノ醫療及一切ノ必要ナル醫療用補給品
（三）　充分ナル住居、被服、及沐浴施設
ニ　本指令ハ收容所ノ近隣ニ於テ入手シ得ル政府又ハ軍ノ需品ニシテ本指令ニ明記セラルル責任ノ完遂ノ爲ニ要スルモノヲ徵發スル爲ノ權限ヲ構成スルモノトス
ホ　收容所組織ヲ現狀ノ儘ニ維持シ且首席俘虜又ハ非軍人被抑留者ニ對シ一切ノ收容所職員、收容所ノ管理記錄、勤務順序表竝ニ收容所ニ在リ又ハ在リタル各俘虜及非軍人被抑留者ノ移送、入院及死亡ノ記錄ニ關シ説明スルコト
ヘ　地方的ニ聯合國代表者ニ依リ指示セラルルコトアルベキ俘虜及非軍人被抑留者ノ移動ノ爲輸送手段及需品ヲ補給シ又ハ地方ノ政府若ハ軍ノ方面ヨリ之ヲ徵發シ且行政的ノ手配ヲ完成スル樣準備スルコト
ト　首席俘虜又ハ非軍人被抑留者ノ監督ノ下ニ左ノ情報ヲ作成シ日本帝國大本營ヲ通ジ之ヲ聯合國最高司令官ニ送付スルコト
（一）　俘虜及非軍人被抑留者ノ一切ノ現在員ノ姓名、階級又ハ地位、國籍、最近親、本國ノ名宛先、年齡、性及健康狀況ヲ示ス完全ナル表
（二）　死亡シタル若ハ移送セラレタル俘虜又ハ非軍人被抑留者ニ關シ姓名、階級又ハ地位、國籍、最近親、本國宛名先、死亡又ハ移送ノ日及目的地又ハ死亡セル者ニ付テハ埋葬場所ヲ示セル入手シ得ル記錄ヨリノ拔萃
四　日本帝國大本營ハ前記三ニ明記セラルル訓令ニ對スル囘答トシテ收容所長ニ依リ提出セラレタル一切ノ惰報ヲ遲滯ナク聯合國最高司令官ニ傳達スベシ
第四部　資源
一　總則
日本帝國政府ハ聯合國最高司令官ノ委任ヲ受ケタル代表者又ハ各自ノ區域ニ於ケル占領軍指揮官ノ指示スル所ニ從ヒ聯合國占領軍ノ使用ノ爲必要ナル一切ノ地方的資源ヲ聯合國占領軍ノ處分ニ委スベシ
二　統制
日本帝國政府ハ一ノ中央機關及主要占領區域ノ各ニ必要ナル下級機關ヲ設置スルモノトス右機關ノ主要ナル職務ハ占領軍ノ爲ニ要スル區域及施設ニ關スル情報ヲ提供シ且右區域及施設ノ爲ノ要求ヲ受理スルニ在ルモノトス
三　石油
聯合國占領軍ニ對シ必要トスル石油製品、貯藏所及配給施設ヲ入手シ得ル限リ供給スル爲準備ガ爲サルルモノトス明細ナル要求ハ後日提出セラルルモノトス
四　勞務
イ　勞務ノ供給
日本帝國政府ハ主要占領區域ノ各ニ設置セラルル中央政府機關ヲ通ジ聯合國最高司令官又ハ各自ノ區域ニ於ケル占領軍指揮官ニ依リ指示セラルル量、訓練度及熟練度ノ勞務ヲ右ノ如ク指示セラレタル期日及場所ニ於テ提供スルモノトス勞務ヲ供給スル機關ハ統制及生產ノ最高能率ヲ碓保スル爲建設隊及沖仲仕組ノ如キ勞務者群ノ完備ヲ能フ限リ保持スルモノトス
ロ　所要勞務
日本帝國政府ニ依リ占領軍ニ提供セラルル所要勞務ハ左記ヲ含ムモノトス
（一）　一般勞務
（二）　技術的勞務及半熟練勞務
（三）　荷揚及貨物處理
（四）　道路、鐵道、船渠及他ノ施設ノ修理
（五）　聯合國占領軍ノ爲ノ住居及關聯施設ノ建設
五　住居
日本帝國政府ハ占領軍ニ對シ其ノ爲ニ適當シ且其ノ要求スル一切ノ建築物ヲ提供スル準備ヲ爲スモノトス右要求ハ次ノ一般的種類卽チ事務所用建築物、病院、宿舍、倉庫及貯藏所、店舖、運輸及通信ノ施設ヲ含ムモノトス明細ナル要求ハ後日提出セラルモノトス建築物ハ能フ限リ耐火建築ニシテ水道、下水處理施設、電氣、煖房裝置ヲ設備セラレ且如何ナル天候ニ於テモ使用シ得ル道路ニ接スルモノタルベキモノトス
六　飛行場
特定ノ飛行場ハ必要ニ應ジ之ヲ占領軍ニ利用シ得シムルモノトス滑走路、航空機分散區域及前庭ハ之ヨリ日本國航空機ヲ除去スルモノトシ又滑走路ハ必要アルトキハ最小限五千フイートノ長サヲ有スル最大ノ堅面著陸區域ト爲ル樣改良セラルルモノトス乘客及貨物發著所、保全、運航及通信ノ施設ハ各飛行場ニ於テ之ヲ利用シ得ルモノトス一切ノ日本國航空機裝置ハ追テ訓令アル迄保護セラルモノトス使用可能ナル一切ノ種類ノ運轉用及保全用裝置及各施設ノ完全ナル目錄ハ之ヲ種類別及區域別ニ作成シ要求アリタルトキ聯合國代表者ニ提示スルモノトス
第五部　雜則
一　日本國大本營ハ裝置及操作員ヲ有スル完全ナル無線電送寫眞及普通寫眞實驗所ヲ聯合國最高司令官通信部長ヲシテ東京區域ニ於テ直ニ利用シ得シムルモノトス
二　日本國大本營ノ適當ナル代表者ハ利用シ得ル撮影員、裝置、處理濟及未處理ノフイルム竝ニ空中及地上寫眞用フイルム及印畫紙ノ閲覽室ニ關スル充分ナル情報ヲ携ヘ四十八時間以內ニ聯合國最高司令司官令部通信部長ノ許ニ出頭スルモノトス此等ハ爾後要求ニ應ジ之ヲ利用シ得シムルモノトス
三　氣象情報ノ蒐集、頒布及記錄ニ從事スル非軍事及軍事ノ一切ノ機關ハ追テ訓令アル迄平常ノ作業ヲ繼續スルモノトス一切ノ氣象資料（「データ」）ノ綴込及一切ノ裝置ハ現狀ノ儘保存セラルルモノトス一切ノ測候施設ニ付國際索引番號、地理的位置及種類（豫報、調查、中央又ハ觀測）ヲ示ス位置表ハ之ヲ遲滯ナク聯合國最高司令官ニ提出スルモノトス
四　日本帝國政府ハ聯合國最高司令官司令部軍醫長ニ對シ遲滯ナク左ノ情報ヲ提供スベシ
イ　主要ナル職員、機關及施設ノ表ヲ付シタル施行中ノ公衆衞生措置ノ網羅的記述
ロ　流行中ノ傳染病ノ性質、發生場所及重大性（施行中ノ防遏措置ヲ含ム）
ハ　藥品、醫藥及他ノ衞生用品ノ最近報吿セラレタル狀況
ニ　一切ノ非軍用病院、療養所及他ノ醫療施設ニ付位置及病床收容力ヲ示ス表
五　日本語以外ノ言語ニ依ル一般ニ對スル情報ノ爲ノ音聲放送ハ直ニ中止セラルルモノトス
指令第二號附屬書「乙」
一　左記附屬書「乙」ハ茲ニ指令第二號ニ附屬セシメラレ右指令ト同一ノ效力ヲ有シ且其ノ一部ト爲ルベシ
二　グアム島ニ司令部ヲ有スル合衆國太平洋艦隊最高司令官ハ指令第二號第二部二（二）ノ意義ニ於ケル聯合國最高司令官ノ海軍代表者ニ指名セラレタリ合衆國太平洋艦隊最高司令官ヲ代表スル海軍連絡團ハ聯合國最高司令官司令部內ニ設置セラレ該連絡團ノ先任將校ハ日本帝國海軍司令部ノ隊長及代表者トノ地方的且個人的連絡ニ當ルモノトス
三　日本帝國大本營ハ日本帝國陸軍ニ付指令第二號第二部一ニ揭ゲラルル所ト對應スル如ク日本國ニ於ケル日本帝國海軍組織ノ境界ヲ遲滯ナク調整スルモノトス日本帝國大本營ハ斯ク指定セラレタル區域ノ海軍指揮官ニ對シ右區域內ニ在ル日本帝國陸軍司令部ノ先任指揮官ガ合衆國第六軍及第八軍ノ指揮將官ニ連絡スルコトヲ命ゼラレ居ル如ク合衆國第三軍隊及第五軍隊指揮官ニ連絡スルコトヲ命ズルモノトス
合衆國第十軍區域及合衆國第二十四軍團區域ト對應スル日本國海軍區域ニ於テハ其ノ日本國海軍指揮官ハ夫々合衆國第五軍隊及第七軍隊ノ指揮官ニ連絡スルモノトス合衆國第三艦隊、第五艦隊及第七艦隊ノ指揮官ハ指令第二號第二部五（ロ）（二）ノ意義ニ於ケル聯合國最高司令官ノ海軍代表者ト看做サル
四　一切ノ日本國商船ニシテ總噸數百噸ヲ超ユルモノノ行動ハ聯合國最高司令官ノ監督ヲ受クルモノトス日本帝國政府及日本帝國大本營ハ全員乘組ミタル右船舶ヲ、其ノ行動ノ指揮ノ監督ニ任ズル合衆國太平洋艦隊最高司令官（又ハ其ノ指名スル代表者）ニ報吿スルモノトス
五　指令第二號第一部二（ロ）、三部五竝ニ第二部六ニ用ヒラレタル「占領軍指揮官」ナル語ハ、海軍占領軍竝ニ海軍部隊ノ武裝解除及復員ニ關シテハ各自ノ責任區域ニ於ケル合衆國第三艦隊、第五艦隊及第七艦隊ノ指揮官ヲ含ムモノトス