910 國際郵便に關する覺書(SCAPIN1900)
一九四八年五月二八日
1. 取消覺書日本政府宛の次の各覺書は、本覺書受領と同時にこれを取消す:
a. 一九四七年八月二六日附「國際郵便」に關する件
b. 一九四七年八月三〇日附「稅關通過手數料の再開」に關する件
c. 一九四七年一〇月六日附「國際郵便」に關する件
d. 一九四七年一一月七日附「國際郵便」に關する件
e. 一九四八年二月二〇日附「國際郵便」に關する件
f. 一九四八年四月二五日附「國際郵便」に關する件
2. 日本と他の一切の國々間の國際郵便は、本覺書に含まれる指示に從つて行う。本覺書は今日までに認可された國際郵便に何れの條項をも加えずまた削減しない。
3. 手紙及び葉書個人及び家族の消息を內容とする手紙及び葉書、及び商用、金融貿易及び取引通信文は、日本國より及び日本宛てに郵便できる。但し次の禁止事項に從うことを要する。
a. 現金、小切手、爲替、支拂命令書その他信用金融證書を移管する通信
b. 外國爲替または在外資產の轉換に關する總司令部の規則を無効ならしめることを目的とする委任權、代理權、指圖その他の手段による日本の在外資產の轉換、移讓または僞裝に關係ある通信
c. 書籍、記事、劇作、音樂、映畵その他報道及び表現手段の飜譯、復製、上演その他の權利を供與或は移轉する通信、特許權または著作權に少しでも關係ある通信、但し特許權または著作權關係事項を扱う正式の徑路及び手續の記述若くは說明及び、正式の徑路を通じて手續をとつた權利の確認はこのかぎりでない。
4. 商業上の書類万國郵便連合規準及び制限事項に定義されている商業書類は、次の各項を除き、日本國へ及び日本から郵送し得る:
a. 音樂本譜
b. 個別的に送られる著書または新聞の原稿
c. 一切の訴訟手續關係書類
d. 政府官吏の起草した一切の種類の書類
5. 印刷物書類、雜誌その他「印刷物」の部類に該當する一切の印刷物は日本國へ及び日本から郵送できる。たゞし万國郵便同盟條約の規定及び制限條項に從わねばならない。
6. 見本及び小包万國郵便同盟條約の定義によるこの種類の郵便物は、日本國へ及び日本から郵送できる。
7. 小包郵便物a,次の規定に從つて、重量一八オンスを超過する貿易見本、及び一般商品を、日本へ及び日本から小包郵便によつて郵送することが許可される。
(1) 重量制限は万國郵便同盟小包郵便協定及び/または適用し得る二國間協定の規定する制限規定に從うが、一箇について二二ポンドを越えてはならない。
(2) 貿易見本を內容とし日本から發送される小包は、貿易廳の許可證を要し、「貿易見本のみ」と裏書した稅關申吿票を附けることを要する。日本以外の地から日本宛に發送される貿易見本小包は、品物の種類を示しそれが貿易見本であることの稅關申吿書を附けなければならない。
(3) 一般商品であつて商取引の對照となり得る數量を內容として日本へ及び日本から發送される小包は、その輸入または輸出を許可する連合國最高司令官の確認する許可書の證明書附寫しまたは復寫寫しを添えねばならない。「輸入許可證同封」または「輸出許可證同封」の文句を、場合に應じて、「本小包は開封稅關檢查差支えなし」の文句と共に外包裝に記すこと。
b. 「救護」小包は日本宛のもののみ、二二ポンドの重量制限附きで許可される。小包の內容は、腐敗の恐れなき食料品、商賣用とならない數量の郵送可能な藥品、石けん衣料その他救護物資に限り、名宛人及び/またはその直近家族の使用品として當然認め得る數量に限られる。各小包に對して次の特定制限が適用される。
(1) 一個の小包に次の煙草のうち一種目だけ封入できる:
卷煙草一二〇〇本以內
葉卷一五〇本以內
パイプ煙草一半ポンド以內
(2) 一個の小包に一,〇〇〇錠以內のサツカリン
c. 救護物資と異なる贈與品、例えば時計、万年筆等は國內に入ることを許可しない。
d. 同一名宛人に對し同一發送人またはその代人による救護小包は一週一個に限定する。
e. 配達不能の救護小包は發送人に返還せず、指定救護機關に引渡して處分せしめる。
f. 許可品目の超過數量分、即ち名宛人及び/又はその直近家族の當然の必要を越える數量については、日本稅關にてこれを拔きとり、第八軍の關係機關に引渡し、公認の救護機關に分配される。
g. 日本に入る一切の小包は日本稅關の檢查を受ける。國際的郵便條約によつて日本に入り稅關の檢查に移される一切の小包郵便物(「救護」小包を含む)、見本及び小包物その他の品物は、配達に際し稅關手數料を名宛人より徵收する。徵收する手數料は万國郵便同盟條約または關係の二國間小包郵便指定の定める額を越えてはならない。有稅品目の輸入は、檢查、評價及び稅算定を統制する現行法令及び規則に服する。(認められた數量の「救護」小包物品は引續き無稅とする。)
h 各小包郵便物には「稅關申吿濟」の札を附け、右の札に正確十分な細目事項の表記を要する。
i. 保險、書留または代金引換は含まない。
j. 配達不能小包(「救護」小包を除く)は、万國郵便同盟條約または、適用し得る二國間協定に從つて處理する。
k. 禁止品目:
(1) 万國郵便小包郵便協定第一六條に該當する品目
(2) 日本の國際正規郵便物に禁止されている物品
(3) いかなる政府に對してであろうと反逆謀反を勸誘促進させる如き事項を含む書籍、小册子、新聞、書物、廣吿、廻狀、印刷物、繪畵。
(4) 日本と他國家間の二國間小包郵便協定の條項によつて禁止されている物品
8. 國際航室郵便a,日本の公認國際航空郵便は、日本へ及び日本よりの國際定期郵便において現在または今後認可される一切の郵便物を含む。
b. 日本へ及び日本よりの國際郵便物の輸送は、一切商業機のみによる、日本向けの航空郵便物は、東京行の札ある行嚢によつてのみ發送される。
9. 書留郵便書留は、次の各項に從い、日本へ及び日本より、航空郵便物を含み、國際定期郵便に於て認可された一切の郵便物について許可される:
a. 料金:
(1) 一物品につき書留料七圓、ただし朝鮮向け書留物品は各々國內書留料金五圓を適用する
(2) 物品郵送時に要求する復信領收書に對しては五圓の手數料、物品郵送後なされる要求には七圓の手數料
b. 責任の範圍:
(1) 補債支拂條項は含まないし、日本圓の國際爲替レイト設定まで考慮することはできない
(2) 日本郵便當局は、書留物品の保護及び適切な處理につき一切の當然な措置を行使せねばならない。
10. 檢閲及び、または稅關檢查到着及び發送國際郵便物は、連合國最高司令官の發出する指示事項によつて、檢閲及び/または稅關檢查を受け得るようにすることを要する。
11. 適用規則a, 認可された手紙、葉書、商用書類、印刷物見本、及び小包を含む國際定期郵便は、万國郵便連合條約によつて管理される。
b. 認可された小包郵便事務は、万國郵便同盟小包郵便協定及び、業務停止當時日本と各國間に實施されていた二國間またはその他の協定の規定條項に從つて、日本政府がこれを運營する。
c. 万國郵便同盟條約の條件及び各種二國間小包郵便協定の條項による記錄類の保存及び所要決算報吿書の作製は、日本政府の責任とする。
d. 國際郵便の運營により外國から日本に支拂うべき金額は、合衆國財務省寄託資金勘定「預金、占領地域への送金、及び仝地域からの輸出による利益金」(記號二一八九〇五,一日本)に預入する。國際郵便の運營による日本からの支拂金は、連合國最高司令官の勸吿に基いて、右寄託資金勘定から支拂う。
e. 日本へ支拂われるべき金額を示す勘定決算書は、遞信省の指示によつて作製し、連合國最高司令官に對して認證する。
f. 國際海上郵便物は、日本船舶またはドイツを除く他國籍船舶によつて日本から發送する。
g. 日本文字、朝鮮文字または中國文字の名宛を持つ國際郵便物は、それが朝鮮、中國及び琉球諸島以外の國に配達されるものである塲合は、行間にローマ字で名宛を書き添えねばならない。
12. 業務通信a,万國郵便同盟條約及び二國間小包郵便協定の要求する書式通知書、查照通吿書、調查書、期末勘定の四半期決算書、その他國際郵便運營に要する一切の通信は、日本遞信省がこれを作製し、開封のまゝ連合國最高司令部民間通信局に提出して、檢查、適當な裏書證明、及び發送を受けるものとする。右通信書類の證明は、「國際郵便による發送、最高司令部認可濟」と記す。
b. 本覺書の範圍に屬する一切の事項に關し、連合國最高司令部民間通信局その他幕僚と、日本遞信省間の直接交涉を認可する。