899 連合國國民に對する日本所在の財産の返遷手續きに關する覺書(SCAPIN1880)
一九四八年四月二二日
1. 次の各覺書を參照すること:
a. 一九四六年五月六日の連合國最高司令部から日本政府にあてた覺書、「日本所在財產の連合國々民に對する返還手續き」に關する件
b. 一九四六年一一月二二日附連合國最高司令部發日本政府宛の覺書、「不當移管を受けた連合國々民の財產の返還」に關する件
2. 上記覺書第一項bを取消し、本覺書をもつてこれに代える。
3. 連合國諸政府と日本政府間の戰爭勃發以前に日本に所在していた連合國々民の有形無形の確認し得る財產で、その當時連合國々民が所有し、または、その後かれらが正式に入手したものであつて、戰爭中日本政府、日本軍將兵または公私日本人或はその他の個人または集團、連合諸國の敵によつて、立法にもとずいてであると、または法律の形式に從うような手續やその他の方法によつたのであるとを問わず、强迫、不當沒收行爲、占有剝奪または掠奪をもつて移管された財產を、連合國々民に返還するために必要な手續きを規定すべきことをこの覺書によつて日本政府に指令する。
4. 强要または欺瞞が用いられなかつたことの確認なき場合は、連合國々民から取りあげた財產は、その獲得に際して代價が支拂われたと否とにかかわらず、すべて不當に沒收または移讓されたものと見なす。
5. 財產は返還當日の現狀のまゝ返還されるべきものとし、別段の規定が設けられない限り、所有權は不當移讓または沒收以前の現狀において返還すべきものとする。
6. 財產は、不當移管または沒收の結果當然起り得る法律上の負担に一切無關係に返還せねばならない。
7. 財產の返還は、連合國または連合國々民所有主に經費を負担せしめることなくなされねばならない。また土地に加えられた損害、貸借料、價格低下、その他の損害のために、日本政府及び敵國政府及び或はそれら諸國々民に對する所有主の權利を害うことがあつてはならない。
8. 上記の規定によつて損害を受けるものがある場合は、日本政府について救濟を求めるものとする。
9. 返還は次の規定に從つてなされることを要する:
a. 連合國最高司令部は返還の各件每に、日本政府あての指令を發して、特定財產返還の期日及び場所を指示する。
b. 權原の讓渡は、管轄司法局またはその支所において、返還期日以前に行うこと。
c. 返還の各件每に、日本政府代表は、返還すべき財產の所在地にある第八軍々政府係官あてに、返還要求の指令寫しを提出すること。
d. 附屬書Aとして本覺書に添附され、一切の規定を記載してある「日本にある財產の連合國々民に對する返還領收證」の書式による領收證は、原本及び寫し七部を作製し、受領書用紙指定の配分法によつて配布すること。一切の寫しは、返還受取人及び日本政府正式代表者の署名をなし、第八軍軍政府係官またはその代表者による證明を受けること。事情が必要とする場合は、追加規定が含まれることがある。
e. 日本政府は、返還のときに、權原の移轉の證書、返還すべき財產の完全な財產目錄及び不當移轉または沒收のときから返還の時までの當該財產の管理に關する公式最終報吿書を提出すること。右報吿書には、金融取引の報吿及び商工業會社の場合においては最終決算書を含むべきこと。權原移轉證書、財產目錄及び管理報吿書は、受領書の寫しを各通每に添附すること。
f. 返還される財產の範圍及び條件に關する同意聲明書を返還のときに作製し、返還受取人及び日本政府正式代表兩者の署名をなし、第八軍軍政府係官またはその代表による證明を受けるべきこと。右聲明書の寫し一通を、受領書の寫し各通に添附すること。
10. 財產の引渡し完了から一〇日以內に、記入濟受領書の寫し四通を、別紙添附書類一切と共に、連合國最高司令部あてに提出するを要する。書類は英文をもつて記し、譯文による書類は、その正確なこと及び眞正なことに關する證明を記入する必要がある。
別紙一通―在日本財產の連合國々民に對する返還受領書