894 占領軍の需要に割當てられた資金の支出に關する覺書(SCAPIN1872)
一九四八年三月三一日
1. 取消し覺書:一九四六年八月二七日附連合國最高司令官發日本政府宛の覺書、「物資調達要求手續」に關する件を取消す。
2. この覺書は、連合國最高司令官によつて日本國民の利益のために發出された指令に從つて、降伏條件を實施しまたは占領目的を達成するための必要を滿すために割當てられた資金と區別し、占領軍の維持に對する必要を滿すために日本政府によつて割當てられた資金の支出の根據をなす文書を定義し限定することを目的とする。
3. 占領軍の維持のための需要は「物資調達文書」によつて日本政府に移牒される。この文書はその適用に當つて、日本國民及び占領軍相互の利益となる種目を包含する。ここに用いられる「物資調達文書」は次の三文書の何れか一つを意味するものであつて、「最高司令部覺書」「書翰指令」または「作業命令書」を意味しない。
a. 物資調達要求書GPA書式第一 第八軍のみがこの要求書を發出する權限を持つている。發出の方法は第八軍司令官によつて規定される。以下b及びc項に定義されている特定目的のための場合を除き、土地、設營、復舊、整備、設備、勞務、物資その他占領軍の維持に要する物件の調達要求の根據となる書類は、「物資調達要求書GPA書式第一」に限られている。物資調達要求(GPA書式第一)の全般的または部分的な履行の確認はGPA書式第二記載の受領書によつて示される。
b. 通信命令書GPA書式第八 これは特殊形式の物資調達要求書であり、日本の部局を經て日本政府に、または連合國最高司令官或は第八軍司令官の指定通信代表を經て運輸省に交附され、通信業務、資材、設備、技術者及び通信設備の裝置、整備または運營に附隨する建設事業の調達を要求する。この文書は、建物、土地(但し索條電線の通行權を除く)、水力、熱力、電力または下水設備を單獨に建設し整備しまたは獲得するためには使用されない。「通信命令書(GPA書式第八)」の全般的または部分的の履行の確認はGPA書式第五に記される受領書によつて示す。
c. 勞務徵用書、勞務書式第一 これは占領軍の所要勞務に對する「調達文書」の特殊形式であり、「調達文書GPA書式第一及び第八」に記述されていない要求條項を含む。これら要求を發する權限ある機關は米第八軍のみである。發出の方法は米第八軍司令官によつて規定される。「勞務徵用書(勞務書式第一)」の全般的または部分的な履行の確認は、部隊勞務係士官の證明書によつて示す。
4. 公益事業、業務及び維持整備並びに、要求された公益事業または業務を供給するための所要工場または運營施設の調達は、次に準據して實施する:
a. 公益事業及び業務
(1) 公共輸送及び通信業務を含む公益事業及び業務の調達文書及び受領書は、公益事業及び業務に對してのみ實施せらるべきこと。
(2) 占領軍の要求を滿すため日本政府の提供する業務及び公益事業に關連して必要となるべき特殊または追加の工場、設備及び土地の獲得並びに、建築物及び設備の建設維持整備は、別箇の特定調達文書に記述する。
(次の(3)項を參照すること)。
(3) 上記第四項a(2)の規定によつて發出される調達文書は、日本政府機關の入手し得る現存施設が、所要の公益事業または業務を提供するに不十分な程度に限り發出される。
b. 維持整備
日本政府が占領軍の要求に應じて行う設備、建造物、道路及びその他施設の維持整備は、特定調達文書(GPA書式第一またはGPA書式第八)または、特定の施設、地域または業務のために承認を受けて發出される正當な調達文書に對して發出される正式作業命令書に記載することとする。維持整備履行の確認は、適宜GPA書式第二またはGPA書式第五に記す。
5. 占領軍の維持に對する調達に關連してはいるが、「調達文書」と考えられない指示事項は次の各項を含む:
a. 日本政府宛の覺書(SCAPIN) 最高司令官覺書が、占領軍の維持のための物資調達を指令する場合には、右調達を記載した調達文書がつづいて發出される。最高司令官覺書が、占領軍の維持のための調達を指令しない場合については以下第八項を參照すること。
b. 書翰指令 米第八軍司令官の發出するもの。この書翰は、發出されたまたは今後發出されるべき調達文書に適用されるものであり、次の諸項を含む:
(1) 一切の維持整備及び家族住宅の建設に要する資材並びに設備の事前調達指令。
(2) 契約價格の總見積經費の三〇%までの、請負業者に對する前拂い認可。
(3) 上記第五項b(1)及び(2)に含まれている指令の履行または認可完了の確認は、米第八軍司令官の指示による。
c. 作業命令書 作業命令書は特定の調達文書に適用される。作業命令に對する受領書は、GPA書式第二、GPA書式第五または、作業命令書發出の根據となつた調達文書を含む勞務書式により、完全受領書または一部受領書に依つて爲される。
6. 次に明記した日附以後、占領軍維持のための要求を滿すために割當てられた日本政府資金からの支拂をなすことはできない。但し、これらの要求が、上記第三項に明記された三調達文書の一つに含まれている場合、または、上記第五項b(1)及び(2)に述べられた書翰指令の一つに含まれている場合を除外する。但し、この場合といえども、上記第三項a、b及びc、並びに第五項b(3)に規定されている通り、これら文書に對する調達の履行が確認された範圍に限る。
a. 一九四八年四月一五日以後、本項の規定は右日附後履行する一切の調達に適用する。しかしそれ以前に履行しその支拂いがいまだなされていない調達には適用しない。
b. 一九四八年七月一日以後、本項は、履行日時に關係なく一切の調達に適用する。
c. ここに含まれている事項は、円資金取極めに影響するものと解釋してはならない。
7. 上記手續に違反する事例ある場合はすべて連合國最高司令官に至急報吿書を提出せねばならない。一切の關係事項を詳細に述べた完全な報吿書は、事實を入手し次第速やかに提出するを要する。各至急報吿書及び完全報吿書の寫し一部を、米第八軍司令官に提出せねばならない。
8. 日本國民の利益となる作業または計畫事業の遂行のため、または降伏條件の實施、またはその他占領目的を實行するため連合國最高司令官の發出する指令は、日本政府宛の覺書(SCAPIN)の形によつて發出される。これら指令の實施は、連合國最高司令官より監督の責任を委ねられた占領軍及び軍政部機關の監督のもとに行われる。これらの要求に關してはいかなる形の調達文書も發出されない。またその遂行に要する資材或は業務に對して受領書は交附されない。支拂いは、連合國最高司令官の指令による日本政府資金からはなされない。ただし右の支拂いが最初の最高司令官覺書の條項、監督の責任を持つ占領軍機關の發出した實施規則または日本政府が提出して連合國最高司令官の承認を經た計畫によつて、完全に正當と認められた場合はこの限りでない。
9. 米第八軍司令官またはその指定する代表者が、本覺書の規定の遵守を確保するため日本側の支出を定期的に檢查する占領軍部隊機關として指定されている。