777 船舶に對する裁判權行使に關する覺書
一九四七年八月五日
1. 日本政府及びその法廷ならびにその機關は、船舶の關係する事件において現存諸指令により、當該船舶の所有者及雇船者またはその他の正當な使用者或は占有者の兩方に對して司法權の行使を認可せられている場合竝に、當該船舶の關係する特殊の違法行爲に對して司法權を行使することを認可されている場合には、その領海內にある船舶に對して裁判權を行使することができる。
2. 上記の一般原則に從つて、船舶に對する裁判權は以下の通り行使せられることを要する。
a. 日本政府及びその法廷ならびにその機關は、連合國軍に所屬し、またはこれに隨伴する連合國國人若くは團體(法人を含む)の所有または傭船する船舶、或はその他正當な占有に屬する船舶に對しては、一切の裁判權を行使してはならない。
b. (1) 船舶の關係する刑事々件において、その船舶が連合國の一或はその國人が所有、傭船しているかまたは正當に占有している場合は、日本政府及びその法廷ならびにその機關は、船舶に對し裁判權を行使することをえない。なおこの場合には、實際その當時台灣島に居住しそれによつて中華民國國籍または市民權を得ている台灣人が、所有、傭船または正當に占有している船舶をも含む。
(2) 船舶の關係する民事々件においては、占領軍當局の審查を受け、日本政府及びその法廷ならびにその機關は、當該船舶に對して裁判權を行使することができる。たゞし、連合軍に所屬し、またはこれに隨伴する連合國々人若しくは團體(法人を含む)によつて、その船舶が所有、傭船され或は正當に占有されている場合は除外される。なおこの場合には上記a項が適用される。
c. 日本政府及びその法廷ならびにその機關は、その領海內にある船舶で連合國々人にあらざる者の所有に屬するものに對しては、占領軍當局の審查を受け、裁判權を行使することができる。たゞしその船舶が連合國の一或はその國人によつて傭船されまたは正當に占有されている場合は除外される。この場合には、上記b項が適用される。
d. 日本政府及びその法廷ならびにその機關は、日本在住台灣人の所有する船舶に對しては占領軍當局の審査を受けて裁判權を行使することができる。たゞしそのような船舶に關連ある刑事々件において、當該台灣人が、中國政府または在日中國使節團の正式に發行した國籍證明書を所有している場合、或はその船舶が連合國の一または國人に傭船され或はその他の方法で正當にその占領を移している場合は、日本政府及びその法廷ならびにその機關は、裁判權を行使することができない。この場合は、上記b項がこれに適用される。
3. 朝鮮、マリアナ諸島、琉球諸島その他連合國占領軍の占領地域からの船舶であつて、軍政府士官または正統の權限をもつ港灣當局から發出された出港書類を意昧する正式證明書を持つものについては、日本政府はこれが合法的に日本の領海及び港に入つたものと認めねばならない。たゞし、そのような船舶が日本の領海及び港灣に入つた後非合法的目的に使用されまたは非合法的行爲に關係する場合は、當然日本の法律に服すべきもので、日本政府及びその法廷ならびにその機關の裁判權に從わねばならない。併し日本政府はかゝる事件において司法權を行使するに先立つて、連合國占領軍當局の承認を得ることを要する。
4. 船舶の乘員に關連ある事件においては、日本政府及びその法廷ならびにその機關は、一般人に對する裁判權行使に關する現存司令に從つて處置すると同樣に、かゝる者に對し裁判權を行使することができる。
5. この指令は、日本領土及び領海內に遺棄された船舶については、それが實際に遺棄されている場合には、適用されない。