貸金請求ノ件
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大審院民事判決録（民録）26輯317頁
大正九年（オ）第百十七號
大正九年三月十三日第三民事部判決
◎判決要旨
- 一 係爭貸借ノ成立時期ニ付キ被告ハ貸借證書ノ日附タル大正三年十二月二十九日ナリト主張シ原告ハ大正四年三月十八日ナリト主張セル場合ニ於テ其貸借ニシテ同一ナル限ハ裁判所カ證據ニ依リ大正四年二月中ニ右貸借成立セルコトヲ判示スルモ妨ケナク其成立ノ日附ニ付キ當事者ノ主張ニ拘束セラルルモノニ非ス
第一審 新潟區裁判所
第二審 新潟地方裁判所
右當事者間ノ貸金請求事件ニ付キ新潟地方裁判所カ大正八年十二月六日言渡シタル判決ニ對シ上告人ヨリ全部破毀ヲ求ムル旨申立ヲ爲シタリ
主文
本件上告ハ之ヲ棄却ス
理由
上告理由ハ原判決ノ理由中ニ「（二）大正四年二月中遠藤作次長谷川應次及控訴人瀧深周元ノ三名ヲ連帶債務者トシテ金三百圓ヲ」云云ト説明セラレ更ニ同理由ノ末文ニ於テ「甲第四號證ヲ控訴人周元ノ承諾ヲ得テ大正四年二月頃被控訴人ニ差入レ更ニ金三百圓ヲ借受ケ」ト説明セラレタルモ甲第四號證ニ依ル貸借成立ノ時期ハ上告人ニ於テハ證書ノ日附ナル大正三年十二月二十九日ト主張シ被上告人ニ於テハ大正四年三月十八日ナリト主張セルモ何人モ大正四年二月中ニ甲第四號證ノ貸借ノ成立セルコトヲ主張シタル事實ナシ然ルニ原審ハ架空事實ヲ設ケテ大正四年二月中ニ貸借ノ成立シタルモノノ如ク説明セラレタルモノハ違法ノ判決ニシテ破毀セラルヘキモノト信スト云フニ在リ
然レトモ本件甲第四號證ニ依ル貸借成立ノ時期ヲ被告タル上告人ニ於テハ證書ノ日附タル大正三年十二月二十九日ナリト主張シ原告タル被上告人ニ於テハ大正四年三月十八日ナリト主張セル場合ニ於テ其貸借ニシテ同一ナル限リハ原審カ證據ニ依リ大正四年二月中ニ右貸借ノ成立セルコトヲ判示スルハ毫モ妨ケナク其成立ノ日附ニ付キ當事者ノ主張ニ拘束セラルルモノニアラス故ニ本論旨ハ理由ナシ
以上説明ノ如クナルヲ以テ民事訴訟法第四百三十九條第一項ニ依リ主文ノ如ク判決セリ