地所賣買解除請求ノ件
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大審院民事判決録（民録）9輯1404頁
明治三十六年（オ）第二百六十六號
明治三十六年十二月十四日第二民事部判决
◎判决要旨
- 一 民事訴訟法第百六十七條ノ裁判所所在地又ハ原告若クハ被告ノ住居地ハ各市町村ヲ指稱スルモノナレハ兩者ノ距離ヲ算定スルニハ裁判所所在ノ市町村ト原告若クハ被告住居ノ市町村ニ於ケル里程元標若クハ其里程元標ヨリ算定セル里程標ヲ以テ各基點ト爲スヘキモノトス
（參照）法律上ノ期間ハ裁判所ノ所在地ニ住居セサル原告若クハ被告ノ爲メ其住居地ト裁判所所在地トノ距離ノ割合ニ應シ海陸路八里毎ニ一日チ伸長ス八里以外ノ端數三里ヲ超ユルトキモ亦同シ（民事訴訟法第百六十七條第一項）
第一審 岐阜地方裁判所
第二審 名古屋控訴院
右當事者間ノ地所賣買解除請求事件ニ付名古屋控訴院カ明治三十六年二月二十六日言渡シタル判决ニ對シ上告代理人ヨリ全部破毀ヲ求ムル申立ヲ爲シ被上告代理人ハ上告棄却ノ申立ヲ爲シタリ
判决
原判决ヲ破毀シ更ニ辯論及ヒ裁判ヲ爲サシムル爲メ本件ヲ名古屋控訴院ニ差戻ス
理由
上告論旨第七點ハ又假リニ原判决認定ノ道路ヲ以テ距離ト定ムヘキモノトスルモ原判决ニ依レハ「前畧深濱ヨリ名古屋市元標迄ノ里程ハ七里三十二丁ナルコトハ明白ナリトス」トアリ抑々裁判所所在地ト云ヒ原告若クハ被告ノ住居地ト云フハ各市町村ヲ指スモノニシテ原院カ一方ヲ名古屋市元標ニ取リタルハ相當ナルモ他ノ一方ヲ深濱ナル大字ニ取リ其大字ノ屬スル海津郡西江村ニ取ラサリシハ民事訴訟法第百六十七條ノ住居地ナル法則ヲ不當ニ適用シタルモノトス蓋シ地圖ニ依ルモ深濱ハ西江村中名古屋市ニ近キ東南ノ極端ニ在ルヲ以テ若シ其一村ノ元標ヲ單位トセハ原判决ノ七里三十二丁ヨリ更ニ長キ里程ヲ得從テ全部八里以上ノ結果ヲ得ヘキモノト信スト云フニ在リ
因テ按スルニ民事訴訟法第百六十七條ノ裁判所所在地又ハ原告若クハ被告ノ住居地ハ各市町村ヲ指稱スルモノナレハ兩者ノ距離ヲ算定スルニハ裁判所所在ノ市町村ト原告若クハ被告住居ノ市町村ニ於ケル里程元標若クハ其里程元標ヨリ算定セル里程標ヲ以テ各基點ト爲スヘキモノトス然ルニ原判决カ本件上告人ノ住居地ヨリ名古屋控訴院所在地ニ至ル距離ヲ算定スルニ當リ名古屋市元標ヲ以テ終點ト爲シタルハ相當ナルモ他ノ一方ヲ大字深濱ノ屬スル海津郡西江村ノ里程標ニ取ラス若クハ里程標ノ存在セサルニ於テハ其理由ヲ示サヽル可カラサル筋合ナルニ大字深濱ヲ起點トシタル結果兩者ノ距離ヲ八里未滿ト斷定シタルハ上告論旨ノ如ク法則ヲ適用セサル不法アルモノトス然ルニ被上告人ハ原判决カ大字深濱ヲ起點トシタルハ原院ニ於ケル上告人ノ主張ニ基ク旨辯解スレトモ本件ノ如キ裁判所ノ職權調査ニ屬スルコトハ當事者ノ申立ニ拘束セラルヘキモノニアラサレハ被上告人ノ辯解ハ採用スルニ足ラス原判决ハ破毀ノ原由アルモノトス既ニ此點ニ於テ破毀スヘキモノトスル以上ハ其他ノ論旨ニ對シ一々説明ヲ付スルノ要ナシ
以上説明ノ如クナルヲ以テ民事訴訟法第四百四十七條第一項第四百四十八條第一項ニ從ヒ主文ノ判决ヲ與フルモノナリ
