證人呼出の宛名に誤記あるも他の事情より其證人に對するものたることを認め得るときは其證人は合式の呼出を受けさるものと云ふを得す
抗告人横濱市青木町三千五百八十二番地西川莊三か爲したる明治三十五年一月二十一日東京地方裁判所が罰金を科したる决定に對する抗告事件に付き東京控訴院民事第一部裁判長判事榊原幾久若同鈴木喜三郎同松岡正義同平島及平同宮島鎌三郎の五氏は左の如く决定せり
(主文)本件抗告は之を棄却す
(事實及理由)抗告の要旨は抗告人は商業の爲め本年一月十日横濱を出發し神戸に赴き居り證人訊問期日なる一月二十一日には商業の都合上出廷致し難き爲め出張先きより出廷すること能はざる旨を屈置きたり然るに正當の理由なく出頭せさるものとしたるは不當なり又呼出状には證人の名宛を西川莊吉と表示しありて抗告人に對する合式の呼出状と認むる能はす然るに合式の呼出を受けなから出頭せさるものとしたるは不當なり依て原决定を廢棄せられたしと云ふに在り
仍て案するに抗告人は本年一月十八日神戸市に在りたるの事實は記録に徴して認め得へきも證人訊問期日なる一月二十一日に原裁判所に出頭し能はさるの正當なる事由ありしことは認むるを得す又證人呼出状には西川莊吉とありて西川莊三と表記せられさるも抗告人の住所を記入しありて能く抗告人に對する呼出状なることを認め得へきか故に合式の呼出を受けさるものと云ふを得す左れは原審か合式の呼出を受けなから正當の理由なく出頭せさるものとして罰金二十圓を言渡したるは至當にして抗告は理由なきものとす依て主文の如く决定す (三月十日决定)