共有物分割請求事件
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法律新聞(新聞)84号6頁


民法第二百五十八條には共有物の竸賣を命することを得る旨の規定あると民訴法に於ては共有物を裁判所か竸賣に付き其竸賣代金を各共有者に分配する手續の規定なし且判决を以て共有物を竸落に付し其代金を各共有者に分配するを得す
原告東京市牛込區市ケ谷甲良町九番地三上鐵藏外三名訴訟代理人辯護士宮田四八氏被告同市芝區車町八十三番地牧野如石訴訟代理人辯護士大久保端造鈴木充美二氏間の明治三十五年第三一二號共有物分割請求事件に付き東京地方裁判所第四民事部裁判長岩田一郎判事横田五郎西川一男の三氏は左の如く判决す
(主文)原告の請求を棄却す、訴訟費用は原告の負擔とす
(事實)原告一定の申立は東京市麹町區飯田町二丁目三十三番地市街宅地壹百參拾七坪六合八夕…………を竸賣に附し其價を五分して原被各自は其一分宛を取得すとの判决を求むと云ふに在りて其陳述要旨は本案地所建物は明治二十八年二月十五日以前より當事者間に於て各均等なる共有權を有し居るを以て其分割を爲さんとするも被告と協議調はす且建物は現物を以て之を分割する能はす地所は之を分割するときは著しく價額を損する虞あるを以て裁判所に於て本件地所建物を竸賣法に從ひ竸賣を命し其代價を五分し其一分つゝを原被告に配當せられんことを民法第二百五十八條の規定に依り訴求する次第なりと云ふに在り
被告は原告の請求を棄却す訴訟費用は原告の負擔とすとの判决を求むと申立て本案地所建物は被告に於て完合なる所有權者にして原告等と共有に非るを以て原告の請求に應するを得すと陳述せり
(理由)按するに民法第二百五十八條には共有物に付き共有者間に分割の協議調はさるときは之を裁判所に請求することを得へく裁判所は現物を以て分割を爲すこと能はさるとき又は分割に依りて著しく其價額を損する處あるときは共有物の竸賣を命することを得る旨の規定ありと雖民事訴訟法に於ては共有物を裁判所か竸賣に付し其竸賣代金を各共有者に分配すへき手續に關する規定存せさるのみならす判决に依りては共有物を竸賣に付し其代金を各共有者に分配することを得さるを以て本件原告の請求は不當なりとす依て民事訴訟法第七十二條一項を適用し主文の如く評决せり(三月三十一日判决)