前訴訟費用未濟の抗辯を爲さんには被告は辯濟を受くへき費用の額を申出で之を支拂はれさりし事實あるを要す左れは費用額の申出てを爲さゝるのみならす一囘の請求たに爲さすして爲したる被告の右抗辯は理由なきものとす
原告東京市下谷區金杉下町四十四番地身分職業不詳佐藤ソノ訴訟代理人辯護士柴崎守雄氏被告同市本所區中之郷瓦町廿八番地身分職業不詳鈴木清助此間の明治三十四年ツ第二二九一號貸金請求事件に付き東京地方裁判所第五民事部裁判長鈴木英太郎判事内田良輔、須賀喜三郎の三氏は左の如く中間判决せり
(主文)被告の妨訴抗辯は之を棄却す
(事實)原告訴訟代理人は被告及訴外人小林豐次郎に對し共同訴訟を提起し被告は原告に對し今百五拾圓に之に對する明治三十四年八月一日より執行濟まで年一割五分の割合に於ける利息を支拂ふ可し訴訟費用は被告の負擔とするとの判决を求むと申立たり其陳述の要旨は被告外一名の依頼に應し原告は明治三十四年三月二十四日金五拾圓を利子は年二割返濟期限は同年四月三十日と定め連帶義務の約束にて貸付たり然るに期日返濟せす利息も三十四年七月まて支拂ふたるのみなるを以て本訴を提起したりと云ふに在りて被告の妨訴抗辯に付ては前訴は一旦取下けたるに相違なきも被告より訴訟費用に付き何等の請求の申出なく又確定もなく請求次第支拂ふへきものにて原告に怠りなきものなれは被告の抗辯は棄却あり度しと陳述したり被告訴訟代理人は再訴に付き前訴訟費用未濟の妨〓抗辯を提出し本案の辯論を拒むと申立てたり其理由として陳述する要旨は原告は被告に對し明治三十四年十一月廿五日本訴と同一原因の金額壹百圓の訴を東京區裁判所に提起したるも同年十二月十七日之れか取下を爲したるものにして其以來被告に對し同件の訴訟費用を辯濟させるに依り爰に妨訴抗辯を提出し本案の辯論を拒むと云ふに在り
(理由)〓訴の取下けと爲りたる事實は當事者間爭なき處なり因て〓するに被告か前訴訟費用未濟の抗辯を爲さんに〓〓〓を受くへき費用の額を申出て之を支拂はれさりし事實ある事を要す然るに被告は原告に於て〓〓〓申出なき事請求次〓支拂ふへき事原告に怠りなき事の旨を以て被告の抗辯を否認するに拘はらす一も其請求〓爲したる事の證書を示さゝるは勿論本件に於ても尚は其費用の額を申出てさるものなるを以て被告の妨訴抗辯は理由なきものと認め主文の如く判决す(二月十二日判决言渡)