被告人株式會社濱名銀行法律上代理人飯尾儀一郎相手方岡部喜三郎間の明治三十四年(ラ)第一三〇號訴訟費用確定に對する抗告事件に付き東京控訴院民事第三部裁判長横田秀雄判事布施又四郎松岡義正藤波元左宮崎恆三郎の五氏决定する左の如し
(主文)抗告を棄却す
(理由)抗告の要旨は第一相手方か自宅より濱松町又は東京市との間を往復したるは法廷に出頭する爲めにせしにあらすして唯訴訟準備の爲め辯護士の許に赴きたるに過きさるものなり然るに之に關する旅費日當を訴訟費用として確定したるは不當なり殊に右日當に付ては辯護士の自から法廷に出頭したる日當と重複するか故に不當なりと云ふに在れとも(一)靜岡地方裁判所濱松支部へ出訴の依頼を爲す爲めに同支部所在地の辯護士の許に至る旅行(二)東京控訴院に控訴を爲すことの依頼の爲め同院所在地の辯護士の許に至る旅行(三)親行文附與申請の依頼の爲め前記濱松支部所在地に至る旅行に付ては其(一)(二)は訴訟を爲す爲め(四)は確定判决に執行力を付する爲め孰れも必要の所爲なるを以て之に關する往復の旅費は孰も之を訴訟に必要なる費用と認む可く其(一)(二)の旅行に付ては日當を要すること勿論なるを以て同しく必要費用と認むへきものとす
第二、第二審の訴訟記録閲貫申請の印紙右申請の書類認料及ひ閲貫の爲めの出廷日當は自己の都合に依り爲したる無用の費用なるに之を訴訟費用として確定したるは不當なりと云ふに在れとも右記録閲覽の度數は唯一囘に止まり其所爲は訴訟に必要なる範圍に屬するを以て之に關する印紙代書類〓料及ひ日當は是又訴訟に必要なる費用と認むへきものとす而して原决定に認めたる數額は孰れも相當なるか故に抗告は其理由なし是れ主文の如く决定する所以なり(十一月卅一日决定)