地所經界確定請求上告事件
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法律新聞(新聞)67号9頁


上告人山梨縣北多摩郡更科村七番戸平民農久保寺儀兵衛被上告人同縣回郡同村平民農久保寺名之作間の明治三十四年(十)第百四十號地所經界確定請求上告事件に付き東京控訴院民事第一部裁判長遠藤忠次判事鈴木喜三郎平野正富平島及平相原祐彌の五氏判决する左の如し
(主文)明治三十四年六月廿五日甲府地方裁判所か本件に付き言渡したる判决を破毀し更らに辯護及裁判をなさしむる爲め本件を同裁判所に差戻す
(事實及理由)上告人は原判决全部の破毀を求むる申立を爲し左の上告理由を陳述し被上告人は之に對し辯護を爲し上條棄却の申立をなしたり
上告理由第一點 上告人は被上告人の爲め係爭地の騙害を受けたりとの立證準備として本年五月廿三日口頭辯論期日に於て期日變更の申立を〓し更に六月十日を以て證書の取寄せ並に韮崎町長腰卷豐丸を證人として訊問あらんことの申請を爲したるに不必要として之を却下せられたるに拘はらす控訴人か本訴の原因たる偏害の事實を認め難きか故に結局其請求を不當とせさるを得す」と裁判せられたるは必要爭點に對して立證を許さゞる不法の裁判なりと云ふに在り
案するに上告人か原審に於て前掲證據調の申請を爲したること及ひ原裁判所か之を不必要として却下したることは原審口頭辯論調書に徴して明白なり然るに原裁判所か損害事質の立證なしとして本訴の請求を却下したるは立證の途を杜絶して證明なきを責めたる不法あるを免かれす是れ民事訴訟法第四百四拾七條第四百四拾八條に則り主文の如く判决する所以なり(十一月二十九日判决言渡)