裁判所書記の處分變更申請事件
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法律新聞(新聞)55号11頁


申請人千葉縣千葉町千二百五十一番地辯護士星野直より提起せる明治三十四年(イ)二四〇號裁判所書記の處分變更申請事件に付き東京地方裁判所第四民事部裁判長岩田一郎判事林頼三郎西川一男の三氏は决既する左の如し
(主文)申請を却下す
(事實)申請の要旨は東京地方裁判所明治三十三年(ロ)三九六號妨訴抗辯棄却判决正本并に口頭辯論期日呼出状は單に申請人の出張事務所たる東京本所區緑町三丁目四十五番地に於て申請人の使用人若くは筆生にあらざる小熊ノブに送達せられたり右は民事訴訟法第百四十五條第百四十六條に違反せる無效の送達にして該送達たるや執達吏のなしたるものなれども同吏は裁判所書記の職權に專屬する送達の施行委任を受くるものなれば書記と執達吏の關係は本人と代理人に異ならず故に執達吏の爲したる處分は取も直さず書記の處分なるを以て民事訴訟法第四百六十五條に則り更に適法の送達あらんことを申請すと云ふに在り
(理由)仍て審案するに抑も送達は執達吏若くは郵便配達人の職權にして裁判所書記は此等の送達吏をして送達を爲さしむるの職權を有するものたることは民事訴訟法第百三十六條の規定する處にして裁判所書記と送達吏との間には敢て代理等の關係あることなく各自獨立の職權に依り其行爲を爲すものなり故に送達吏の處分は固より裁判所書記の處分と見ることを得ず然らば執達吏のなしたる送達の違法を理由とし裁判所書記の變更を求むるは極めて理由なきものと云はざるを得ずとて主文の如く决定せり(九月廿五日决定)