抗告人栃木縣下都賀郡栃木町大字萬町百二十五番地平民横山定助が提起したる明治三十四年(ソ)一〇〇號不動産竸落决定に對する抗告事件に付東京地方裁判所第一休暇部裁判長岩田一郎判事關口鐶林頼三郎の三氏は左の如く决定せり
(主文)抗告を棄却す
(理由)本件は竸賣法に依り竸賣手續を開始せられたるものとす而して竸賣法に依る不動産竸賣手續に於て竸賣期日は竸賣手續の利害關係人に通知するを要することは竸賣法第二十七條第二項に定むる處なり然れども該手續は之を法律上の賣却條件と云ふを得ず何となれば賣却條件とは其不動産を賣却し之を竸落人に移轉するに付ての條件即ち竸賣其ものゝ成立若くは其效果に關するものを指稱するものにして竸賣の成立若くは其效力に關係なき竸賣手續の如きは之に包含せず之れ民事訴訟法第六百七十二條に於て賣却條件以外に竸賣手續の違背にして異議の理由と爲す事を得るものを列擧したる點より見るも明なり而して本件抗告の理由たる竸賣期日の通知は竸賣に關する手續なりと雖ども竸賣其者の成立若くは效果に何等の關係あるものに非ず從て利害關係人に該通知をなさゞる事實あるも敢て賣却條件に違反したるものと云ふを得ず