約束手形金請求訴訟事件
平易表示にする
法律新聞(新聞)50号8頁


控訴人東京市芝區芝口河岸十五號地株式會社新橋銀行取締役鈴木字兵衛訴訟代理人辯護士鈴木一氏より被控訴人同市牛込區中金町二十五番地淺尾汎三郎訴訟代理人辯護士松田源治氏に係る約束手形支拂金請求控訴事件に付き東京控訴院民事第一部裁判長田代律雄判事鈴本喜三郎平島及平平野正富相原祐彌の五氏は裁判所書記小川彪氏立會の上判决すると左の如し
(主文)本件控訴は之を棄却す、訴訟費用は控訴人の負擔とす
(事實)控訴代理人は原判决の全部を廢棄し被控訴人は控訴人に對し金千五百圓及ひ之に對する明治三十二年七月三日より本件執行濟迄年五朱の利息を支拂ふべしとの判决を求め被控訴代理人は本件控訴の棄却を求めたり
(理由)手形所持人が支拂を受けざる場合に於て法律に定めたる手續を爲さざるときは裏書讓渡人に對し償還請求の權利を失ふべきものなりとす換言すれば裏書讓渡人は其償還請求に應ずるの義務なきが故に斯る場合に於て假令所持人に對し手形金額を支拂ひたりとするも振出人に向て不當利當を名として其返還を請求するとを得ざるや勿論なりとす然らば本件手形の所持人たりし日本銀行が適法の手續を爲さざりしに拘はらず控訴人に於て支拂ひたるものなりとの事實は控訴人の認めて爭はざる所なれば本件請求の不當なるや明白なりとす既に此點に於て本訴は判斷したるが故に他の防禦方法に付いては説明を省畧し主文の如く判决したり