控訴人東京市淺草區馬道町七丁目三番地永田完充訴訟代理人辯護士田澤鎭太郎氏より被控訴人東京市深川區西六間堀町三十六番地杉島武八訴訟代理人辯護士齋藤正毅氏に係る約束手形金請求控訴事件に付東京控訴院民事第一部裁判長田代律雄判事鈴木喜三郎平島及平平野正富相原祐彌の五氏は裁判所書記小川彪氏立會の上判决すること左の如し
(主文)本件控訴は之を棄却す、第二審の訴訟費用は控訴人の負擔とす
(事實)控訴人は明治三十四年二月九日東京地方裁判所が本件に付き言渡したる第一審判决の全部を廢棄し被控訴人は控訴人に約束手形金二百五十矢を辯濟すべしとの判决を求むる旨を申立被控訴人は控訴棄却の判决を求むる旨を申立した
(理由)本案の約束手形は其支拂の場所を東海銀行本所支店と定めたるものなることは當事者の爭はざる事實なり既に手形上支拂の場所を定めたる以上は所持人たる控訴人は必ず其支拂の場所に於て振出人に對し手形の呈示を爲し其支拂を求めざるべからざるものにして控訴人が振出人の住所に於て爲したる手形の呈示乃ち支拂請求は之を無效なりと云はざるべからず加ふるに甲第一號證の補箋及甲第二號證拒絶證書に依れば控訴人が東海銀行本所支店に於て東海銀行に對して支拂を求めたることを認め得るに過ぎずして同所に於て振出人に向て支拂の請求を爲したることは之を認むるを得ざるが故に控訴人は必竟振出人に對して適法なる手形の呈示を爲さゞりしものと斷定せざるを得ず而して裏書人に對して償還の請求を爲し得るは適法に振出人に手形の呈示を爲したるも其支拂なかりし場合ならざるべからざるに控訴人に於て此手續を履踐せざりし以上は被控訴人に對する本案の請求は之を排斥せざるを得ざるものとす既に此點に付き本件の爭を决するに足るを以て爾餘の爭點及び證據に關しては其説明を省畧すとて主文の如く判决せり(五月廿七日判决言渡)