石材採掘確定請求控訴事件
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法律新聞(新聞)35号6頁


控訴人靜岡縣田方郡田中村神嶋區法定代理人同縣同郡田中村長杉村洪平訴訟代理人岡村輝彦島村次男の二氏より被控訴人同縣同郡江間村法定代理人同村長後藤爲次郎訴訟代理人菊池武夫高梨鎌次郎の二氏に係る明治三十三年(子)第五六六號石材採掘確認請求事件に付き東京控訴院民事第三部裁判長横田秀雄判事本橋啓吉平野正富松岡義正宮崎直三郎の五氏は裁判所書記高橋一郎氏立會の上判决すること左の如し
(主文)本件控訴は之を棄却す第二審の訴訟費用は控訴人の負擔とす
(事實)控訴人一定の申立は第一審判决を廢棄し被控訴人の請求を棄却すとの判决を求むと云ふに在りて被控訴人一定の申立は本件控訴は之が棄却を求むと云ふに在り
(理由)同院は職權を以て本件控訴の適法なるや否を調査するに區有財産に關する事務は區所屬の村長之を管理すべきものなることは町村制第百十五條に前條に記載する事務は町村の行政に關する規則に依り町村長之を管理すべしとあるを以て明白にして此場合に於ては區會の設置あると否とは盖し問ふ所にあらざるなり何となれば區有財産に關する事務は區會の設置あるときにのみ生ずべきものにあらざればなり而て前條即ち同制第百十四條には財産に關する事務とあるに依り單に財産を管理すべきに止らずして財産に關する一切の事務を管理すべきものなれば町村の行政に關する規則即ち同制第六十八條に依り村長は區有財産に關し外部に對する區の代表者なりと云はざるべからず故に本件に於て田中村長杉村洪平が控訴區を代表するは當然なりと雖も同制第六十八條は村長に區の代表資格を附與したるに止り訴訟行爲を爲すの資格を附與したるものにあらざれば村長が區を代表して訴訟行爲を爲さんとするには同制第百十四條に基き區會を設置し同制第三十三條を適用し區會の决議に依り特別授權なかるべからず然るに本件控訴區に於ては區會の設置なく從つて控訴に付き特別授權の决議なきことは控訴代理人の主張する所なれば本件は特別授權なき區の代表者の爲したる控訴にして不適法なりとて主文の如く判决せり(四月十八日判决言渡)