控訴人靜岡縣周知郡森町森百七十四番戸平民六石清一郎相續人大石稱太郎訴訟代理人辯護士中野福三郎氏より被控訴人愛知縣名古屋市西瓦町百八十番戸仲買人保谷瀧〓訴訟代理人辯護士小林豐太郎氏に係る明治三十三年(子)第五一九號株式代金請求控訴事件 適法なる控訴に付き東京控訴院第三民事部裁判長横内秀雄判事橋爪捨藏普賢寺轍吉〓岡義正宮崎恆三郎の五氏の裁判所書記小坂善三氏立會いの上判决すると左の如し
(主文)第一審の判决を左の如く變更す、本件の請求を却下す訴訟費用は被控訴人の負擔とす
(事實)控訴人訴訟代理人は第一審判决の全部を廢棄し被控訴人の請求を棄却す訴訟費用は被控訴人の負擔とすとの判决を求むと申立て被控訴〓訴訟代理人は本件控訴棄却の判决を求むと申立たり
(理由)控訴人が甲第一號證たる委任状に於ける大石清一郎名下の印影を見認したること及び第一審に於ける泉澤仙太郎の證言とに因り明治廿九年十一月中被控訴人が控訴人より舊掛川鐵道株式會社の株式一百株を其登記前に於て金二百二十圓を以て買受けたりと認定す控訴人は斯る契約を爲したることなき旨を主張すと雖も何等の立證なきを以て之を證するに由なし右行爲は登記前に爲したる株式の讓渡にして法律の禁止するものなることは舊商法第百八十條の法意即ち射利の目的を以て株式の申込を爲すの害毒を防止するの趣旨いて登記前に爲したる株式の讓渡を無效と爲したる理由に徴し明白なり而して禁止法若くは善良の風俗に反する事項〓〓きて給付を爲したる者は不法の原因の爲めに給付を爲したる者に外ならず斯る給付を爲したる者は其給付の返還に付き法律上の保證を求むるの訴訟を有さず故に之が返還を請求するの權なし盖法律は違法〓行爲を爲したる者を該行爲に因て生じたる損害に付き保證するものにあらざればなり被控訴人は前掲〓明の如く禁止法に反〓控訴人に金二百二十圓を給付したるものたり故に前示の法則に依り該金圓の返還を請求するの〓なし從て本件の控訴を理由ありと認め主文の如く判决したり(四月十一日裁判言渡)