約束手形金請求事件
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法律新聞(新聞)29号5頁


控訴人東京市京橋區三十間堀三丁目十四番地安井孝輔訴訟代理人平井恆之助氏より被控訴人東京市日本橋區伊勢町二番地株式會社二十銀行法定代理人兒島惟謙訴訟代理人森肇氏に係る明治三十四年(子)第八十號約束手形金請求控訴事件に付東京控訴院民事第二部裁判長小山温判事齋藤十一郎高橋覺折原吉之助藤波元雄の五氏は裁判所書記高橋一郎氏立會の上判决すること左の如し
(主文)第一審判决全部を次の如く更變す被控訴人の請求を却下す訴訴費用は第一審第二審分共に被控訴人の負擔とす
(事實)控訴人は原判决を廢棄し被控上人の請求は之を却下すと判决相成度と申立て被控訴人は本件控訴は之を棄却する旨の判决相成度と申立たり控訴人陳述の要旨は本件約束手形の裏書讓受人は株式會社二十銀行深川出張所にして被控訴人にあらず出張所なる者は商法に規定せる支店と異なり必しも營業の場所に非ず若し營業の場所とせば立證を要す假りに株式會社二十銀行出張所は被控訴人にして被控訴人は正當の所持人なりとするも本件手形に於ては株式會社新橋銀行を支拂擔當者と定めあるに被控訴人は商法第四百九十條に定めたる手續を行はす又被控訴人は控訴人に支拂の爲め本件手形の呈示を爲したるをなしと云ふに在り
(理由)抑も約束手形に關する權利關係は書面に記載せる文言に因て知られ得ることを要す本件約束手形即ち甲第一號證を閲するに其裏書に株式會社二十銀行深川出張所に宛てたるものあれども別〓株式會社二十銀行に對する裏書なし而して其出張所と稱する者は必しも某自体と同一に非ず某とは異なりたる一個の權利主体たることは世上に多き例なりとす故に株式會社二十銀行出張所に對する裏書は株式會社二十銀行に對する裏書なりと傚すを得ず從て被控訴人は裏書讓受人なりと云ふを得ずとて主文の如く判决したり(三月三十日判决言渡)