地上權消滅原因確證請求控訴事件
平易表示にする
法律新聞(新聞)21号8頁


控訴人東京市芝區明舟町十九番地平民無業荒木博臣代理人高木豐三小出五郎の二氏より被控訴人同市京橋區元數寄屋町二丁目四番地平民紙商吉田嘉助代理人梅田貞次氏に係る地上權消滅原因確認請求事件の控訴に付東京控訴院民事第一部裁判長田代律雄判事鈴木喜三郎平島及平野正富相原祐彌の五氏裁判所書記小川虎氏立會の上判决すること左の如し
(主文)第一審判决中地代支拂に關する部分を除き其他の部分を廢棄し本訴を却下す訴訟費用は第一審第二審共に被控訴人の負擔とす
(事實)控訴代理人は原判决中被告は原告に對し明治十六年十一月分より明治三十二年十二月十二日迄一ケ月金四十錢二厘の割合の地代を支拂ふ可〓との部分を除く外全部を取消し被控訴人の請求を却下すとの判决を求むと申立たり
(理由)本訴請求の目的は控訴人が曾て地上權者たりしときに於て地上權消滅の原因ありしことを確認すべしと云ふに在るを以て先づ斯る請求は確認訴訟として許容す可きものなるや否やに付審案を遂ぐるに凡そ確認訴訟なるものは現在に於て權利關係の存在するか若しくは存在せざるかに付爭ある場合にして且つ是を確定せしむることに於て直に利益あるときひ限り提起し得べきものとす故に過去の事實關係の存否を確むる爲めには决して許す可きものにあらず何となれは若し斯る場合に於ても尚且つ訴訟として提起する事を許すものとするときは健訟の弊を生し相手方をして費用の額に堪へざらしむるの害を蒙らしむるに至るべければなり果して然らば本件は過去に於て地上權消滅の原因ありしこと乃ち過去の事實の存在を確むるを目的とするものなれば確認訴訟として許容するの必要なきものとすとて本訴を却下したり(本年一月十八日判决言渡)