相續權囘復控訴事件
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法律新聞(新聞)3号9頁


控訴人長野縣上水内郡安茂里村宮嶋菊五郎仝人父法定代理人宮嶋富太訴訟代理人田澤鎭太郎氏より被控訴人長野縣長野市大字鶴賀町宮嶋惣太訴訟代理人佐々木茂三郎氏に係る東京扣訴院明治三十三年(子)第二百四十八號相續權囘復扣訴事件に付東京控訴院民事第二部裁判長小山温判事羽生顯親保田久三郎粟田松藏齊藤十一郎の五氏は曰く宮島富太は宮島菊五郎の法定代理人として本件の扣訴を爲したるも菊五郎を代表する資格なきことは自から主張する處なるのみならす仝人は唯々菊五郎の實父たるに過きすして菊五郎か宮島龜作の指定相續人として其死跡を相續したることは當事者間に爭ひなき處なれは菊五郎と富太とは其家を異にすること明なるを以て假令富太か菊五郎の實父なりと雖も親權を行使するを得さるものなり然のみならす相續權は財産權に非さるを以て相續權に關する本件に於ては親權を行ふ父と雖も菊五郎を代理するの權限なきものなり故に宮島富太か菊五郎の法定代理人として訴訟行爲するを得さるものなるを以て右富太は本件の扣訴を爲す權利なきものなり從て仝人か爲したる扣訴は不適法のものなりとの事實理由に起き扣訴棄却を言渡したり