大正四年(オ)第七百七十八號
大正五年四月二十四日第二民事部判決
◎判決要旨
- 一 衆議院議員選擧法第三十六條ニ於テ選擧人ハ自ラ被選擧人ノ氏名ヲ記載シト謂ヒ又同第三十八條ニ於テ自ラ被選擧人ノ氏名ヲ書スルト謂フハ選擧人カ被選擧人ノ氏名ヲ表彰スヘキ文字ヲ認識シ獨力ヲ以テ之ヲ投票用紙ニ筆記スルノ義ナレハ筆ヲ他ノ器具ノ型内ニ托シテ被選擧人ノ氏名ノ文字ヲ表現セシムル場合ノ如キハ之ニ包含セサルモノトス(判旨第一點)
(參照) 選擧人ハ投票所ニ於テ投票用紙ニ自ラ被選擧人一名ノ氏名ヲ記載シテ投函スヘシ(衆議院議員選擧法第三十六條第一項)
選擧人名簿ニ登録セラレタル者選擧權ヲ有セサルトキハ投票ヲ爲スコトヲ得ス」自ラ被選擧人ノ氏名ヲ書スルコト能ハサル者亦前項ニ同シ(衆議院議員選擧法第三十八條) - 一 選擧人カ筆ヲ紙型切拔ノ輪廓内ニ託シテ被選擧人ノ氏名ノ文字ヲ表現セシメタル投票ハ衆議院議員選擧法第三十八條第二項ニ依リ投票ヲ爲スコトヲ得サル者ノ爲シタル投票ニシテ有效ナルヘキ理由ナケレハ縱令同法第五十八條ニ規定セル無效ノ場合ニ該當セスト雖モ亦之ヲ無效ト爲スヘキモノトス(同上)
(參照) 左ノ投票ハ之ヲ無效トス」一、成規ノ用紙ヲ用井サルモノ」二、一投票中二人以上ノ被選擧人ヲ記載シタルモノ」三、被選擧人ノ何人タルヲ確認シ難キモノ」四、被選擧權ナキ者ノ氏名ヲ記載シタルモノ」五、被選擧人ノ氏名ノ外他事ヲ記載シタルモノ但シ官位、職業、身分、住所又ハ敬稱ノ類ヲ記入シタルモノハ此ノ限ニ在ラス(衆議院議員選擧法第五十八條) - 一 事實承審官カ係爭事實ヲ判斷スルニ當リ物理、數理其他所謂實驗法則等ノ智識ヲ要スル場合ニハ職務上又ハ個人的ノ研究ニ依リ其智識ヲ補足スルコトヲ妨ケスト雖モ事實判斷ノ資料タルヘキ事實ニ至テハ必スヤ法規ニ從ヒ裁判所ニ顯ハレタルモノナルコトヲ要ス(判旨第二點)
右當事者間ノ衆議院議員當選無效訴訟事件ニ付長崎控訴院カ大正四年六月二十九日言渡シタル判決ニ對シ上告人ヨリ全部破毀ヲ求ムル申立ヲ爲シ被上告人ハ上告棄却ヲ求ムル申立ヲ爲シタリ
理由
上告論旨第一點ハ原判決ハ其理由ノ部ニ於テ紙型使用ノ效力ニ關シ衆議院議員選擧法第三十六條及第三十八條ニ選擧人ハ自ラ投票用紙ニ被選擧人ノ氏名ヲ記載スヘク自ラ被選擧人ノ氏名ヲ書スルコト能ハサル者ハ投票ヲ爲スヲ得サル旨ノ規定アリ其所謂自記若クハ自書トハ選擧人カ被選擧人ノ氏名ヲ表彰スヘキ文字ニ對スル認識ヲ以テ獨力之ヲ記載スルコトヲ要スル法意ナリト解スヘキカ故ニ單ニ紙型面上塗墨ノ方法ニ由リテ字形ヲ描出シ(後段之ヲ第一種型摺ト稱ス)或ハ全ク筆ヲ紙型切抜ノ輪廓内ニ托シテ文字ヲ表現セシム(後段之ヲ第二種型摺ト稱ス)ルカ如キ前者ハ其塗墨區域廣ク紙型面ニ渉リ後者ハ唯其切抜ノ部位ニ局限セラルル差アルモ其直接ニ紙型ヲ使用スルハ即チ同一ニシテ二者共ニ文字ノ認識ヲ基礎トセサル紙型本位ノ機械的動作タルニ過キサレハ之ヲ以テ獨力記載ノ實質ヲ具備スルモノト謂フヲ得サルヤ論ヲ竢タス從テ是等ノ方法ヲ以テ被選擧人ヲ表示セル投票ハ同法第五十八條ニ規定セル無效ノ場合ニ該當セスト雖モ前記法條ニ違反セル理由ニ於テ當然無效ナリト論定セサルヘカラスト説明セラレタリト雖モ其所謂第二種型摺ノ投票ヲ第一種型摺ト同一ニ無效ナリト論斷セルハ衆議院議員選擧法ノ規定ヲ誤解セルモノト云ハサル可カラス何トナレハ第一種型摺ハ塗布ニシテ筆記ニ非ラサルヲ以テ選擧法第三十六條ノ要求ヲ充シタルモノニ非ラサルハ勿論ナリト雖モ第二種型摺ニ至リテハ單ニ紙型ニ依據シタリト云フニ過キスシテ畢竟被選擧人ノ氏名ヲ筆記シタルニ外ナラサルヲ以テ何等法規ニ牴觸スル所ナク有效ナリト云ハサルヲ得ス若シ第二種型摺ヲモ無效ナリトセンカ手本ニ依リテ記載セル投票モ又敷寫ヲ爲シタルモノモ同シク無效ト云ハサル可カラス其或モノニ依據シテ記載セシ點ニ至リテハ共ニ同一ナルヲ以テナリ豈斯ノ如キ道理アランヤ選擧法第三十六條ハ代人投票ヲ許ササル規定第三十八條ニ代書投票ヲ禁シタルニ過キスシテ投票ノ效力ニ關スル法規ニ非ス其他投票ノ無效ヲ規定セシ第五十八條ニモ或モノニ依據シテ記載セシ投票ノ無效ヲ認メアルニ非ス要スルニ原判決ハ第二種型摺ノ投票モ亦自記シタルモノニ非スト擅ニ事實ヲ確定シタル不法アルモノトスト云ヒ」第五點ハ衆議院議員選擧法ハ其第五十八條ニ於テ「左ノ投票ハ之ヲ無效トス」ト規定シ同條第一號乃至第五號ニ無效トナルヘキ投票ヲ列記シ無效投票ヲ限定セリ從ツテ原判決ノ所謂第一種型摺第二種型摺ノ投票ト雖モ成規ノ用紙ヲ用ヒ且被選擧人ノ何人タルヲ確認シ得ルモノニシテ前掲二號四號竝ニ五號ノ投票ニ該當セサル以上ハ之ヲ以テ無效ノ投票ナリト云フヲ得ス元來文字ハ意思表示ノ符合ニ過キサルカ故ニ如何ナル方法ニ依リ文字ヲ現出スルモ投票ノ場合ニ於テハ被選擧人ノ何人ヲ表示シタルヤヲ知リ得ルヲ以テ足リ文字ノ形體配列竝ニ間隔ノ状態如何ハ之ヲ問フノ要ナキハ勿論行筆上生氣ノ含否筆路ノ自然不自然若クハ墨色ノ濃淡ノ如キハ投票ノ效力ニ何等ノ關係ヲ有セサルナリ原判決ハ衆議院議員選擧法第三十六條第一項及第三十八條第二項ノ規定ヲ引用シ自記若クハ自書トハ選擧人カ被選擧人ノ氏名ヲ表彰スヘキ文字ニ對スル認識ヲ以テ獨力之ヲ記載スルコトヲ要スルノ法意ナリトシ型ニ依リテ記シタルモノハ文字ノ認識ヲ基礎トセサル紙型本位ノ機械的動作タルニ過キサレハ此等ノ投票ハ無效ナリト論斷セリ然レトモ型ニ依リテ記載シタル投票ト雖モ必シモ文字ニ對スル認識ナキモノノ投票ナリト論斷スルヲ得サルノミナラス型ヲ用フルモ其投票ノ自記ナルコトヲ否定スヘキ理由アルコトナシ前掲選擧法第三十六條第一項ハ代理投票ヲ禁シ其三十八條第二項ハ代書投票ヲ禁シタル規定ナリト解スヘシ然ラサレハ其規定ハ全ク無意義ニ歸ス而シテ右規定ノ「氏名ヲ書スル」トハ「氏名ヲ記スル」ノ意義ニシテ筆墨ヲ以テ投票用紙ノ表面ニ被選擧人ノ氏名ヲ表現スレハ可ナリ從テ型ヲ用ヒタルト否トハ氏名表現ノ效力ニ何等ノ影響ナシトス假ニ前掲第三十八條第二項ハ文字ノ智識ナキ者ノ投票ハ無效ナリトスル原判決解釋ノ如キ規定ナリトセンカ原判決ハ須ラク本訴型摺ノ投票ハ被選擧人ノ氏名ヲ書スルコト能ハサル者ノ爲シタル投票ナルコトヲ證據ニ基キ説明セサルヘカラス何トナレハ型ニ依リ現出シタル投票ト雖モ文字ノ智識アル者ノ爲シタルモノナランニハ右規定ニ依リ無效タルノ謂ナケレハナリ然ルニ原判決ハ裁判所ノ獨自ノ心證ニ依リ上告人ノ得タル投票中百八十七票ハ第一種型摺四十七票ハ第二種型摺ナルコトヲ認定シ而シテ型摺ノ投票ハ無效ナリト判定シタルニ止マリ其型摺ノ投票カ文字ノ智識ナキ者ニ依リテ爲サレタリトノ證據ヲ説明セス要之原判決ハ法則ノ適用ヲ誤リタル不法アルト共ニ理由不備ノ不法アルヲ免レサルモノト信スト云フニ在リ
然レトモ衆議院議員選擧法第三十六條ニ於テ選擧人ハ自ラ被選擧人ノ氏名ヲ記載シト謂ヒ同第三十八條ニ於テ選擧人自ラ被選擧人ノ氏名ヲ書スルト謂フハ選擧人ニ於テ被選擧人ノ氏名ヲ表彰スヘキ文字ヲ認識シ獨力ヲ以テ之ヲ投票用紙ニ筆記スルノ謂ヒニシテ選擧人カ筆ヲ他ノ器具ノ型内ニ托シテ被選擧人ノ氏名ノ文字ヲ表現セシムル場合ヲ包含セサルモノトス故ニ原審カ全ク筆ヲ紙型切抜ノ輪廓内ニ托シテ文字ヲ表現セシムル方法タル第二種型摺ニ依ル本件投票ヲ以テ同法第三十六條及第三十八條ニ所謂自記又ハ自書ナルモノニ該當セサルモノト判示シタルハ正當ナリトス而シテ同法第三十六條ニ所謂自ラ記載スルトハ同第三十八條ニ所謂自ラ書スルノ謂ヒニ外ナラスシテ同第三十八條ハ被選擧人ノ氏名ヲ自ラ書スルコト能ハサル者ハ投票ヲ爲スコトヲ得サ〓旨ヲ定メタルモノナレハ前記投票ハ即チ投票ヲ爲スコトヲ得サル者ノ爲シタル投票ニシテ有效ナルヘキ理由ナキヲ以テ原審カ前記投票ハ同法第五十八條ニ規定セル無效ノ場合ニ該當セスト雖之ヲ無效ナリト判示シタルコトモ亦正當ナリ蓋シ同第五十八條ハ投票カ自書ナルニ拘ハラス無效ナル場合ヲ規定シタルモノト解スヘキカ故ナリ又原審ハ本件投票ニ付キ紙型切拔ノ輪廓内ニ托シテ投票用紙ニ文字ヲ表現セシメタルコトノ事實ヲ確定シ右事實ニ據リテ該投票カ選擧人ニ於テ被選擧人ノ氏名ヲ表彰スヘキ文字ヲ認識シ獨力ヲ以テ之ヲ筆記シタルモノニ非スト認定シタルモノナレハ右認定ニ對スル證據ノ説明ナシト謂フヘカラス要スルニ本論旨ハ孰レモ理由ナシ
上告論旨第四點ハ原院ハ板摺投票ニ關スル爭點ヲ判斷スルニ方リ之カ心證ヲ得ンカ爲メ文字ニ乏シキ者(人)ヲシテ或ハ精確ニ或ハ杜撰ニ甲第一號證ノ如キ紙型ヲ使用セシメ(行爲)タル數樣ノ試作物(物)ニ參考シタル旨ヲ説明シタリ果シテ然ラハ茲ニ所謂文字ニ乏シキ人トハ民事訴訟法上如何ナル地位ニ在ルモノナリヤ證人ナリヤ鑑定人ナリヤ或ハ參考人ナリヤ又此人カ裁判所ニ智識ヲ與ヘ心證ヲ作ラシメタル行爲ハ民事訴訟法上何ト名ツクヘキモノナリヤ此人ノ作成シタル數樣ノ試作物トハ書證ナリヤ將檢證ノ對照物ナリヤ或ハ此二者以外ノモノナリヤ是等ノ問題ニ關シ原判決ハ何等ノ説明ヲ與ヘサルヲ以テ判文ヨリ之ヲ窺知スル能ハサルモ民事訴訟法ニ於テ裁判官ニ心證ヲ作ルヘキ資料ヲ供スルモノハ當事者ノ辯論以外ニ於テハ要スルニ人證書證檢證ニ外ナラサルヲ以テ或人ヲシテ甲第一號證ヲ使用シ數樣ノ試作物ヲ作ラシメ之ヲ以テ心證ヲ得ントセハ必ス民事訴訟法ノ規定スルトコロニ從テ證據調ヲ爲スヘキモノトス然ルニ原院カ當事者ノ申立ニ依ルニ非ス又職權ヲ以テセル證據決定ニ依ルニ非スシテ擅ニ或人ヲシテ前記ノ如キ行爲ヲナサシメ其試作物ヲ參考ニ供シタルハ甚シキ違法ニ屬ス猶一歩ヲ進メテ之ヲ論スレハ原判決ニ示サレタル文字ニ乏シキ人ハ當事者ト如何ナル關係アリヤ完全ナル能力ヲ有スル人ナリヤ固ヨリ之ヲ知ル能ハス又其數樣ノ試作物ト雖モ若之カ法延ニ顯ハルルニ於テハ當事者ハ之ニ對スル攻撃防禦ノ申立ヲ爲シ得ヘク從テ其利不利ノ關係ハ未タ遽ニ之ヲ斷ス可カラサルモノトス然ルニ裁判所カ訟延外ニ於テ無責任ニシテ且資格不明ノ人ニ作成セシメタル對照物ヲ採テ判斷ノ資料ニ供シタルハ民事訴訟ノ根本原理ニ於テ許スヘカラサル違法ナリ原院ノ解釋ヲ忖度スルニ或ハ如上ノ行爲ハ民事訴訟法ノ所謂人證書證檢證ノ範圍ニ屬スヘキモノニ非ス從テ民事訴訟法ノ規定ヲ遵守スルノ要ナシト云フニ在ランカ是亦不法タルヲ免レス裁判官カ平生蘊蓄セル智識ヲ判決ニ應用スルハ當然ナレトモ係爭事件ニ付事實ヲ斷定セントスルニ臨ミ他人ノ智識若クハ行爲ヲ借ラントセハ必ス法定ノ手續ヲ履踐セサル可カラス例之筆跡ノ異同カ爭點タルノ時判事カ豫テ學得シタル書道ノ智識ニ依リテ其異同ヲ決スルハ甚可ナレトモ判事ニ書道ノ智識ナキ爲メ他人ノ智識ヲ借ラントセハ之ヲ鑑定人ニ竢タサル可ラサルカ如シ今此理論ヲ本件ニ適用スルニ判事ハ自己ノ智識ヲ以テシテハ如何ナルモノカ文字ニ乏シキ人ノ紙型ヲ使用シタル筆跡ナリヤ否ヲ判斷スル能ハサルヲ以テ或人ヲシテ數樣ノ試作物ヲ作ラシメタルモノニシテ即事實ヲ斷定セントスルニ臨ミ他人ノ智識ト行爲トヲ借リタルモノナレハ民事訴訟法ノ規定ヲ遵守セスンハ證據タル效力ヲ有セサルモノナリトス然ルニ原院カ同法ノ規定ニ從ハス法延外ニ於テ成立セル試作物ヲ以テ判斷ノ資料ニ供シタルハ不法也ト云ヒ」之ニ對スル被上告代理人ノ答辯ハ原院カ板摺投票ノ效力ヲ判斷スルニ當リ訴訟手續以外ニ成リタル試作物ヲ參考ト爲シタルハ不法ナリト謂フニ在リ然レトモ我民事訴訟法第二百十七條ニ依レハ裁判官ノ心證ハ辯論ノ全趣旨及證據調ノ結果ニ基クコトヲ要スト雖モ判決ニハ心證ノ標準ト爲リタル理由ヲ開示スルコトヲ要スルモノニ非ス(獨舊民訴二五九新二八六ハ少シク規定ヲ異ニス)是レ御院カ心證ノ由來ヲ説明スルヲ要セス(大審院判決録第六輯四卷五五頁)若クハ心證ノ因テ生シタル理由ヲ説示スルノ責ナシ(同書九輯十七卷八〇九頁)ト云ヒ屡闡明セラレタル所ナリ他面心證ノ憑據トスヘキモノハ必スシモ當事者ノ申立テタル事項ニ限定セラルヘキモノニ非ストノ判例ヲ生シタルモ亦茲ニ胚胎スルモノノ如シ(同書三二年二卷九四頁)故ニ裁判官カ法延ニ於テ得タル證據原因ニ付キ其考覈ヲ助クルカ爲メ藥物若クハ機械(顯微鏡ノ類)等ニ依リ實驗ノ結果ヲ參考スルハ法ノ禁セサル所ナルト同時ニ一一之ヲ判決ニ開示スヘキ責任ナシ原判決ニハ「板摺投票ニ關スル爭點ヲ判斷スルニ當リ其心證ノ根據ヲ説明スルコト洵ニ困難ナリト雖要スルニ各係爭投票ヲ採テ之ト雙方間ニ爭ナキ有效ノ投票ヲ對照シ(中畧)更ニ係爭投票自體ニ於ケル文字ノ形體其配列云云等ヨリ觀察歸納シタル結果」云云ト説明シアリテ原院ハ法延ニ現レタル投票ノ對照ト係爭投票自體竝ニ辯論ノ全趣旨ニ基キ既ニ心證ヲ得タルヲ以テ此以上説明スルヲ要セサルモ其心證ノ公平ナルコトヲ殊更判文ニ示サンカ爲メ心證ノ結果ヲ確實ニ説明スルノ材料トシテ右理由ノ中間ニ「一面時ニ文字ニ乏シキ者ヲシテ或ハ精確ニ或ハ杜撰ニ甲一號證ノ如キ紙型ヲ使用セシメタル數樣ノ試作物ニ參考(參考ノ文字特ニ御留意ヲ請フ)シ」トアルカ如ク單ニ判事ノ主觀的確信ノ由來ノ適法ナル説明ノ外ニ更ニ參考トシタル無用ノ材料ヲ附加シタルニ過キスシテ判文ニ明カナルカ如ク敢テ心證ノ原因ト爲シタルニ非ス故ニ此參考部分ノ説明ニ對スル攻撃ハ上告適法ノ理由タラスト信スト云フニ在リ
判旨第二點 按スルニ事實承審官ハ係爭事實ヲ判斷スルニ當リ物理數理其他所謂實驗法則等ノ智識ヲ要スル場合ニ於テハ必シモ鑑定其他ノ證據調ニ依ラスシテ職務上又ハ個人的ノ研究ニ依リ其必要ナル智識ヲ補足シ之ニ基キ係爭事實ヲ判斷スルヲ妨ケスト雖モ事實判斷ノ資料タルヘキ事實ニ至リテハ必ス法規ニ從ヒ裁判所ニ顯ハレタルモノナルコトヲ要スルモノニシテ事實承審官カ裁判外ニ於テ知リ得タル事實又ハ作成セシメタル對照物ニシテ而モ當事者ノ辯論ヲ經サルモノノ如キハ之ヲ判斷ノ資料ト爲スコトヲ得サルハ民事訴訟法上ノ原理ニ照シテ毫モ疑ヲ容レス然ルニ原審ハ本件係爭投票ノ果シテ紙型切拔面上ノ塗墨又ハ紙型切拔ノ輪廓内ニ托シタル運筆ニ因リ被選擧人ノ氏名ヲ表現セシメタルモノナルヤ否ヤノ爭點ヲ判斷スルニ當リ法延外ニ於テ文字ニ乏キ者ヲシテ或ハ精確ニ或ハ杜撰ニ甲第一號證ノ如キ紙型ヲ用ヰ數樣ノ試作物ヲ作成セシメ之ヲ判斷ノ資料ト爲シタルコトハ原判文上洵ニ明白ナルヲ以テ原判決ハ訴訟手續ニ違反スル裁判ニシテ全部破毀ヲ免カレサルモノトス被上告代理人ハ原判決中上告論旨ノ論難スル部分ハ他ニ適法ナル説明ノ外ニ更ニ附加シタル無用ノ説明ニ外ナラサルカ如ク論スルモ原審ハ他ノ證據ト共ニ右試作物ニモ參考シタル結果其判斷ヲ爲シタルモノナルコト原判文ヲ通讀シテ明白疑ナキヲ以テ此答辯ハ採用スルニ由ナシ
以上説示スル理由ナルヲ以テ他ノ上告論旨ニ對スル辯明ハ之ヲ省畧シ民事訴訟法第四百四十七條及第四百四十八條各第一項ノ規定ニ從ヒ主文ノ如ク判決ス
大正四年(オ)第七百七十八号
大正五年四月二十四日第二民事部判決
◎判決要旨
- 一 衆議院議員選挙法第三十六条に於て選挙人は自ら被選挙人の氏名を記載しと謂ひ又同第三十八条に於て自ら被選挙人の氏名を書すると謂ふは選挙人が被選挙人の氏名を表彰すべき文字を認識し独力を以て之を投票用紙に筆記するの義なれば筆を他の器具の型内に托して被選挙人の氏名の文字を表現せしむる場合の如きは之に包含せざるものとす。
(判旨第一点)
(参照) 選挙人は投票所に於て投票用紙に自ら被選挙人一名の氏名を記載して投函すべし。
(衆議院議員選挙法第三十六条第一項)
選挙人名簿に登録せられたる者選挙権を有せざるときは投票を為すことを得ず。」自ら被選挙人の氏名を書すること能はざる者亦前項に同じ。
(衆議院議員選挙法第三十八条) - 一 選挙人が筆を紙型切抜の輪廓内に託して被選挙人の氏名の文字を表現せしめたる投票は衆議院議員選挙法第三十八条第二項に依り投票を為すことを得ざる者の為したる投票にして有効なるべき理由なければ縦令同法第五十八条に規定せる無効の場合に該当せずと雖も亦之を無効と為すべきものとす。
(同上)
(参照) 左の投票は之を無効とす。」一、成規の用紙を用井さるもの」二、一投票中二人以上の被選挙人を記載したるもの」三、被選挙人の何人たるを確認し難きもの」四、被選挙権なき者の氏名を記載したるもの」五、被選挙人の氏名の外他事を記載したるもの。
但し官位、職業、身分、住所又は敬称の類を記入したるものは此の限に在らず(衆議院議員選挙法第五十八条) - 一 事実承審官が係争事実を判断するに当り物理、数理其他所謂実験法則等の智識を要する場合には職務上又は個人的の研究に依り其智識を補足することを妨げずと雖も事実判断の資料たるべき事実に至ては必ずや法規に従ひ裁判所に顕はれたるものなることを要す。
(判旨第二点)
右当事者間の衆議院議員当選無効訴訟事件に付、長崎控訴院が大正四年六月二十九日言渡したる判決に対し上告人より全部破毀を求むる申立を為し被上告人は上告棄却を求むる申立を為したり。
理由
上告論旨第一点は原判決は其理由の部に於て紙型使用の効力に関し衆議院議員選挙法第三十六条及第三十八条に選挙人は自ら投票用紙に被選挙人の氏名を記載すべく自ら被選挙人の氏名を書すること能はざる者は投票を為すを得ざる旨の規定あり其所謂自記若くは自書とは選挙人が被選挙人の氏名を表彰すべき文字に対する認識を以て独力之を記載することを要する法意なりと解すべきが故に単に紙型面上塗墨の方法に由りて字形を描出し(後段之を第一種型摺と称す)或は全く筆を紙型切抜の輪廓内に托して文字を表現せしむ(後段之を第二種型摺と称す)るが如き前者は其塗墨区域広く紙型面に渉り後者は唯其切抜の部位に局限せらるる差あるも其直接に紙型を使用するは。
即ち同一にして二者共に文字の認識を基礎とせざる紙型本位の機械的動作たるに過ぎざれば之を以て独力記載の実質を具備するものと謂ふを得ざるや論を竢たず。
従て是等の方法を以て被選挙人を表示せる投票は同法第五十八条に規定せる無効の場合に該当せずと雖も前記法条に違反せる理由に於て当然無効なりと論定せざるべからずと説明せられたりと雖も其所謂第二種型摺の投票を第一種型摺と同一に無効なりと論断せるは衆議院議員選挙法の規定を誤解せるものと云はざる可からず。
何となれば第一種型摺は塗布にして筆記に非らざるを以て選挙法第三十六条の要求を充したるものに非らざるは勿論なりと雖も第二種型摺に至りては単に紙型に依拠したりと云ふに過ぎずして畢竟被選挙人の氏名を筆記したるに外ならざるを以て何等法規に牴触する所なく有効なりと云はざるを得ず。
若し第二種型摺をも無効なりとせんか手本に依りて記載せる投票も又敷写を為したるものも同じく無効と云はざる可からず。
其或ものに依拠して記載せし点に至りては共に同一なるを以てなり。
豈斯の如き道理あらんや選挙法第三十六条は代人投票を許さざる規定第三十八条に代書投票を禁じたるに過ぎずして投票の効力に関する法規に非ず其他投票の無効を規定せし第五十八条にも或ものに依拠して記載せし投票の無効を認めあるに非ず要するに原判決は第二種型摺の投票も亦自記したるものに非ずと擅に事実を確定したる不法あるものとすと云ひ」第五点は衆議院議員選挙法は其第五十八条に於て「左の投票は之を無効とす。」と規定し同条第一号乃至第五号に無効となるべき投票を列記し無効投票を限定せり従って原判決の所謂第一種型摺第二種型摺の投票と雖も成規の用紙を用ひ、且、被選挙人の何人たるを確認し得るものにして前掲二号四号並に五号の投票に該当せざる以上は之を以て無効の投票なりと云ふを得ず。
元来文字は意思表示の符合に過ぎざるが故に如何なる方法に依り文字を現出するも投票の場合に於ては被選挙人の何人を表示したるやを知り得るを以て足り文字の形体配列並に間隔の状態如何は之を問ふの要なきは勿論行筆上生気の含否筆路の自然不自然若くは墨色の濃淡の如きは投票の効力に何等の関係を有せざるなり。
原判決は衆議院議員選挙法第三十六条第一項及第三十八条第二項の規定を引用し自記若くは自書とは選挙人が被選挙人の氏名を表彰すべき文字に対する認識を以て独力之を記載することを要するの法意なりとし型に依りて記したるものは文字の認識を基礎とせざる紙型本位の機械的動作たるに過ぎざれば此等の投票は無効なりと論断せり。
然れども型に依りて記載したる投票と雖も必しも文字に対する認識なきものの投票なりと論断するを得ざるのみならず型を用ふるも其投票の自記なることを否定すべき理由あることなし前掲選挙法第三十六条第一項は代理投票を禁じ其三十八条第二項は代書投票を禁じたる規定なりと解すべし。
然らざれば其規定は全く無意義に帰す。
而して右規定の「氏名を書する」とは「氏名を記する」の意義にして筆墨を以て投票用紙の表面に被選挙人の氏名を表現すれば可なり。
従て型を用ひたると否とは氏名表現の効力に何等の影響なしとす仮に前掲第三十八条第二項は文字の智識なき者の投票は無効なりとする原判決解釈の如き規定なりとせんか原判決は須らく本訴型摺の投票は被選挙人の氏名を書すること能はざる者の為したる投票なることを証拠に基き説明せざるべからず。
何となれば型に依り現出したる投票と雖も文字の智識ある者の為したるものならんには右規定に依り無効たるの謂なければなり。
然るに原判決は裁判所の独自の心証に依り上告人の得たる投票中百八十七票は第一種型摺四十七票は第二種型摺なることを認定し、而して型摺の投票は無効なりと判定したるに止まり其型摺の投票が文字の智識なき者に依りて為されたりとの証拠を説明せず要之原判決は法則の適用を誤りたる不法あると共に理由不備の不法あるを免れざるものと信ずと云ふに在り
然れども衆議院議員選挙法第三十六条に於て選挙人は自ら被選挙人の氏名を記載しと謂ひ同第三十八条に於て選挙人自ら被選挙人の氏名を書すると謂ふは選挙人に於て被選挙人の氏名を表彰すべき文字を認識し独力を以て之を投票用紙に筆記するの謂ひにして選挙人が筆を他の器具の型内に托して被選挙人の氏名の文字を表現せしむる場合を包含せざるものとす。
故に原審が全く筆を紙型切抜の輪廓内に托して文字を表現せしむる方法たる第二種型摺に依る本件投票を以て同法第三十六条及第三十八条に所謂自記又は自書なるものに該当せざるものと判示したるは正当なりとす。
而して同法第三十六条に所謂自ら記載するとは同第三十八条に所謂自ら書するの謂ひに外ならずして同第三十八条は被選挙人の氏名を自ら書すること能はざる者は投票を為すことを得さ〓旨を定めたるものなれば前記投票は。
即ち投票を為すことを得ざる者の為したる投票にして有効なるべき理由なきを以て原審が前記投票は同法第五十八条に規定せる無効の場合に該当せずと雖之を無効なりと判示したることも亦正当なり。
蓋し同第五十八条は投票が自書なるに拘はらず無効なる場合を規定したるものと解すべきが故なり。
又原審は本件投票に付き紙型切抜の輪廓内に托して投票用紙に文字を表現せしめたることの事実を確定し右事実に拠りて該投票が選挙人に於て被選挙人の氏名を表彰すべき文字を認識し独力を以て之を筆記したるものに非ずと認定したるものなれば右認定に対する証拠の説明なしと謂ふべからず。
要するに本論旨は孰れも理由なし。
上告論旨第四点は原院は板摺投票に関する争点を判断するに方り之が心証を得んか為め文字に乏しき者(人)をして或は精確に或は杜撰に甲第一号証の如き紙型を使用せしめ(行為)たる数様の試作物(物)に参考したる旨を説明したり。
果して然らば茲に所謂文字に乏しき人とは民事訴訟法上如何なる地位に在るものなりや証人なりや鑑定人なりや或は参考人なりや又此人が裁判所に智識を与へ心証を作らしめたる行為は民事訴訟法上何と名つくべきものなりや此人の作成したる数様の試作物とは書証なりや将検証の対照物なりや或は此二者以外のものなりや是等の問題に関し原判決は何等の説明を与へざるを以て判文より之を窺知する能はざるも民事訴訟法に於て裁判官に心証を作るべき資料を供するものは当事者の弁論以外に於ては要するに人証書証検証に外ならざるを以て或人をして甲第一号証を使用し数様の試作物を作らしめ之を以て心証を得んとせば必す民事訴訟法の規定するところに。
従て証拠調を為すべきものとす。
然るに原院が当事者の申立に依るに非ず又職権を以てせる証拠決定に依るに非ずして擅に或人をして前記の如き行為をなさしめ其試作物を参考に供したるは甚しき違法に属す猶一歩を進めて之を論すれば原判決に示されたる文字に乏しき人は当事者と如何なる関係ありや完全なる能力を有する人なりや固より之を知る能はず又其数様の試作物と雖も若之が法延に顕はるるに於ては当事者は之に対する攻撃防禦の申立を為し得べく。
従て其利不利の関係は未だ遽に之を断す可からざるものとす。
然るに裁判所が訟延外に於て無責任にして、且、資格不明の人に作成せしめたる対照物を採で判断の資料に供したるは民事訴訟の根本原理に於て許すべからざる違法なり。
原院の解釈を忖度するに或は如上の行為は民事訴訟法の所謂人証書証検証の範囲に属すべきものに非ず。
従て民事訴訟法の規定を遵守するの要なしと云ふに在らんか是亦不法たるを免れず裁判官が平生蘊蓄せる智識を判決に応用するは当然なれども係争事件に付、事実を断定せんとするに臨み他人の智識若くは行為を借らんとせば必す法定の手続を履践せざる可からず。
例之筆跡の異同が争点たるの時判事が予で学得したる書道の智識に依りて其異同を決するは甚可なれども判事に書道の智識なき為め他人の智識を借らんとせば之を鑑定人に竢たざる可らざるが如し。
今此理論を本件に適用するに判事は自己の智識を以てしては如何なるものが文字に乏しき人の紙型を使用したる筆跡なりや否を判断する能はざるを以て或人をして数様の試作物を作らしめたるものにして即事実を断定せんとするに臨み他人の智識と行為とを借りたるものなれば民事訴訟法の規定を遵守せずんば証拠たる効力を有せざるものなりとす。
然るに原院が同法の規定に従はず法延外に於て成立せる試作物を以て判断の資料に供したるは不法也と云ひ」之に対する被上告代理人の答弁は原院が板摺投票の効力を判断するに当り訴訟手続以外に成りたる試作物を参考と為したるは不法なりと謂ふに在り。
然れども我民事訴訟法第二百十七条に依れば裁判官の心証は弁論の全趣旨及証拠調の結果に基くことを要すと雖も判決には心証の標準と為りたる理由を開示することを要するものに非ず(独旧民訴二五九新二八六は少しく規定を異にす)是れ御院が心証の由来を説明するを要せず。
(大審院判決録第六輯四巻五五頁)若くは心証の因で生じたる理由を説示するの責なし。
(同書九輯十七巻八〇九頁)と云ひ屡闡明せられたる所なり。
他面心証の憑拠とすべきものは必ずしも当事者の申立てたる事項に限定せらるべきものに非ずとの判例を生じたるも亦茲に胚胎するものの如し(同書三二年二巻九四頁)故に裁判官が法延に於て得たる証拠原因に付き其考覈を助くるか為め薬物若くは機械(顕微鏡の類)等に依り実験の結果を参考するは法の禁ぜざる所なると同時に一一之を判決に開示すべき責任なし。
原判決には「板摺投票に関する争点を判断するに当り其心証の根拠を説明すること洵に困難なりと雖要するに各係争投票を採で之と双方間に争なき有効の投票を対照し(中略)更に係争投票自体に於ける文字の形体其配列云云等より観察帰納したる結果」云云と説明しありて原院は法延に現れたる投票の対照と係争投票自体並に弁論の全趣旨に基き既に心証を得たるを以て此以上説明するを要せざるも其心証の公平なることを殊更判文に示さんか為め心証の結果を確実に説明するの材料として右理由の中間に「一面時に文字に乏しき者をして或は精確に或は杜撰に甲一号証の如き紙型を使用せしめたる数様の試作物に参考(参考の文字特に御留意を請ふ)し」とあるが如く単に判事の主観的確信の由来の適法なる説明の外に更に参考としたる無用の材料を附加したるに過ぎずして判文に明かなるが如く敢て心証の原因と為したるに非ず。
故に此参考部分の説明に対する攻撃は上告適法の理由たらずと信ずと云ふに在り
判旨第二点 按ずるに事実承審官は係争事実を判断するに当り物理数理其他所謂実験法則等の智識を要する場合に於ては必しも鑑定其他の証拠調に依らずして職務上又は個人的の研究に依り其必要なる智識を補足し之に基き係争事実を判断するを妨げずと雖も事実判断の資料たるべき事実に至りては必す法規に従ひ裁判所に顕はれたるものなることを要するものにして事実承審官が裁判外に於て知り得たる事実又は作成せしめたる対照物にして而も当事者の弁論を経さるものの如きは之を判断の資料と為すことを得ざるは民事訴訟法上の原理に照して毫も疑を容れず。
然るに原審は本件係争投票の果して紙型切抜面上の塗墨又は紙型切抜の輪廓内に托したる運筆に因り被選挙人の氏名を表現せしめたるものなるや否やの争点を判断するに当り法延外に於て文字に乏き者をして或は精確に或は杜撰に甲第一号証の如き紙型を用ゐ数様の試作物を作成せしめ之を判断の資料と為したることは原判文上洵に明白なるを以て原判決は訴訟手続に違反する裁判にして全部破毀を免がれざるものとす。
被上告代理人は原判決中上告論旨の論難する部分は他に適法なる説明の外に更に附加したる無用の説明に外ならざるが如く論するも原審は他の証拠と共に右試作物にも参考したる結果其判断を為したるものなること原判文を通読して明白疑なきを以て此答弁は採用するに由なし。
以上説示する理由なるを以て他の上告論旨に対する弁明は之を省略し民事訴訟法第四百四十七条及第四百四十八条各第一項の規定に従ひ主文の如く判決す