工作料金請求ノ件
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大審院民事判決録（民録）18輯537頁
明治四十五年（オ）第百三號
明治四十五年五月二十八日第一民事部判決
◎判決要旨
- 一 裁判長及ヒ裁判所書記ノ署名捺印ヲ缺ク口頭辯論調書ハ無效ニシテ證明ノ效力ヲ有セス
第一審 東京地方裁判所
第二審 東京控訴院
右當事者間ノ工作料金請求事件ニ付東京控訴院カ明治四十五年二月十六日言渡シタル判決ニ對シ上告人ヨリ全部破毀ヲ求ムル申立ヲ爲シ被上告人ハ上告棄却ノ申立ヲ爲シタリ
判決
原判決ヲ破毀シ更ニ辯論及ヒ裁判ヲ爲サシムル爲メ本件ヲ東京控訴院ニ差戻ス
理由
上告論旨第三點ハ原院判決ハ民事訴訟法第百三十二條ニ違背シタル調書ニ依リテ言渡シタル不法アルモノナリ原院明治四十五年二月十六日ノ判決言渡調書ヲ關スルニ裁判所書記甲斐渡ハ署名捺印アルモ裁判長今村恭太郎ハ署名ノミニシテ捺印ナキモノナリ裁判長ノ捺印ナキ法廷調書ハ民事訴訟法第百三十二條ニ違背シタル不法ノ調書ニシテ之ニ依リテハ果シテ原院カ法定ノ方式ヲ遵守シテ本件判決ヲ言渡シタルヤ否ヤ之レカ證明ノ效力無キモノト信ス（御院明治四十二年（オ）第一九號同年五月一日言渡同同年（オ）第一二〇號同年六月十四日言渡判例）仍テ結局原院判決ハ證明ノ效力無キ調書ニ依リテ言渡サレタル不法ノ判決ナリト言ハサル可カラスト云フニ在リ
按スルニ口頭辯論調書ニ裁判長及ヒ裁判所書記ノ署名捺印ヲ要スルコトハ民事訴訟法第百三十二條ニ規定シタル所ナレハ之ニ違背シタル調書ハ無效ニシテ證明ノ效力ヲ有セス原院ノ判決言渡調書ヲ關スルニ裁判長ノ捺印ヲ缺キ法定ノ方式ヲ具ヘサレハ其調書ハ口頭辯論ニ關スル方式ヲ遵守シタルコトヲ證明スルノ效力ナク從テ其方式ヲ遵守シタルコトハ之ヲ知ルニ由ナキヲ以テ原判決ハ此點ニ於テ破毀ヲ免カレサルモノトス
右ノ理由ニ依リ原判決ヲ破毀スルニ足ルヲ以テ他ノ上告論旨ニ對スル説明ニ及ハス民事訴訟法第四百四十七條第一項第四百四十八條第一項ニ依リ主文ノ如ク判決ス
