衆議院議院當選無効ノ訴ニ付當該判事全員ニ對スル忌避申請ノ件
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大審院民事判決録（民録）9輯501頁
明治三十六年（マ）第六號
明治三十六年四月二十七日第二民事部决定
◎决定要旨
- 一 法律上ノ問題ヲ解决スルノミヲ以テ事件ノ勝敗ヲ决シ得ルカ又ハ當事者ノ立證セントスル事實ニ關セス他ノ事實理由ニ依リ勝敗ヲ决シ得ヘキ場合ニ於テハ立證方法ハ不必要ニ屬スルカ故ニ裁判所ハ職權ヲ以テ其申立ヲ棄却スルコトヲ得ヘシ
申請人 徳差藤兵衛
訴訟代理人 高橋直吉 小野恒三郎 榊喜洋芽 伊東忍 佐藤槌之丞 川口榮之進 高橋文五郎
函館控訴院ニ於ケル衆議院議員當選無効ノ訴ニ付キ原告代理人ニ於テ當該各判事全員ニ對シ忌避ノ申請ヲ爲シタル處同控訴院ハ民事訴訟法第三十六條ニ依リ本院ノ决定ヲ受ケシムル爲メ事件ヲ送付セルニ因リ同條第二項ノ規定ニ依リ决定スルコト左ノ如シ
本件申請ハ之ヲ棄却ス
理由
原告代理人申請ノ要旨ハ本件ノ係爭事實ハ（一）被告カ當選當時青森電燈株式會社取締役ナルカ本年二月二十七日辭職シタリトノ被告ノ主張ハ果シテ事實ナリヤ（二）被告カ三月上旬同會社ノ取締役ノ職務ヲ行ハサルヤ否ヤ（三）同會社カ青森郵便局其他ノ官衙ニ對シ電燈點火ヲ爲シ居ルハ政府ノ爲メニ請負ト見認ムヘキ事實ナルヤ否ヤニ在リ而シテ此等被告カ爭フ事實ニ對シ原告ハ書證ノ取寄證人ノ喚問ヲ申請シ以テ之ヲ立證セントセシニ全部却下ノ决定ヲ與ヘ以テ原告ノ立證方法ヲ全ク杜絶シ原告カ到底辯論スルコト能ハサル地位ニ置カレタリ右ハ原告ノ主張事實ヲ確定セシメスシテ不利益ノ豫斷ヲ抱キ偏頗ノ裁判ヲ爲ス恐レアリト思料スト云フニ在リ
按スルニ訴訟ニハ單ニ法律上ノ問題ヲ解决スルノミヲ以テ事件ノ勝敗ヲ决シ得可キモノアリ又ハ當事者ノ立證セントスル事實ニ關セス他ノ事實理由ニ依リ勝敗ヲ决シ得可キモノナキニアラス斯ノ如キ場合ニ於テハ立證方法ハ不必要ニ屬スルヲ以テ裁判所ハ職權ヲ以テ其申立ヲ棄却スルコトヲ得可シ决シテ當事者ノ申立ニ拘束セラル可キモノニアラス故ニ裁判所カ當事者ノ立證方法ノ申立ヲ全ク棄却スルモ單ニ此一事ヲ以テ偏頗ノ恐レアルモノト看做ス可カラサルハ勿論ナリ而シテ本件忌避ノ申請ハ前掲ノ如ク單ニ立證方法ヲ全ク棄却シタリトノ一事ヲ以テ忌避ノ原因ト爲スモノナレハ其理由ナシ依テ本件申請ハ棄却ス可キモノト評决ス
