兇徒嘯聚ノ件
平易表示にする
大審院刑事判決録（刑録）13輯236頁
明治四十年（れ）第一一〇號
明治四十年二月二十五日宣告
◎判决要旨
- 一 暴動ヲ爲スノ目的ヲ以テ多衆ヲ嘯集シ其共同力ニ依リ暴行ヲ爲シタル以上ハ一私人ニ對スルモノト雖モ亦兇徒聚衆罪ノ成立ヲ妨ケス
第一審 靜岡地方裁判所
第二審 名古屋控訴院
被告人 西村善吉 外二名
右兇徒嘯聚被告事件ニ付明治三十九年十二月十九日名古屋控訴院ニ於テ言渡シタル判决ヲ不法トシ被告等ヨリ上告ヲ爲シタリ依テ刑事訴訟法第二百八十三條ノ定式ヲ履行シ判决スルコト左ノ如シ
被告三名上告趣意書ハ元來兇徒嘯衆ナルモノハ公安ヲ破壞スル目的ヲ以テ暴動ヲ爲シタルコトヲ必要トス本案事件ノ如ク只々私人ニ對シ暴行ヲ加ヘタル如キハ公安ニ對シ直接何等ノ影響ヲ與フルモノニアラス然ルニ原審ハ猶ホ兇徒嘯衆犯ト認メ處罰セラレシハ法律ノ適用ニ於テ誤リアリト信スト云フニ在レトモ◎多衆嘯集ノ目的カ暴動ヲ爲スニ在ル以上ハ官廳ニ喧閙シ官吏ニ強逼スルニ限ラス村市ヲ騷擾シ其他總テ嘯集シタル多衆ノ共同力ニ依リ暴行ヲ爲シタルモノハ一私人ニ對スルモノト雖モ猶ホ刑法第百三十七條ノ兇徒聚集罪ヲ構成スルモノニシテ其公安ヲ害スルコト勿論ナリ本件被告等カ暴動ニ與ミシ多衆ト共ニ反對派ナル望月栗田兩家ニ押寄セ其際其場ニ集合セル多衆ヲ煽動シテ暴動ヲ助勢シタル事實ハ判文上明カニシテ多衆ノ共同力ニ依ラス單純ニ一私人ニ對シ暴行ヲ加ヘタルモノニ非ラサルカ故ニ原院カ刑法第百三十七條中段ヲ適用シタルハ相當ニシテ上告論旨ハ其理由ナシ
右ノ理由ナルヲ以テ刑事訴訟法第二百八十五條ニ依リ本件上告ハ之ヲ棄却ス
檢事小宮三保松干與明治四十年二月二十五日大審院第二刑事部
