詐欺取財等ノ件
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大審院刑事判決録（刑録）3輯5巻72頁
明治三十年第四一七號
明治三十年五月三十一日宣告
◎判决要旨
身分詐稱罪ニ付其犯時ヲ明示セサル判决ハ不法ナリ
第一審 新潟地方裁判所
第二審 東京控訴院
被告人 鳥山新次郎
右詐欺取財及ヒ住所氏名詐稱被告事件ニ付明治三十年四月二十六日東京控訴院ニ於テ言渡シタル判决ニ對シ被告ヨリ上告ヲ爲シタルニ依リ本院ハ刑事訴訟法第二百八十三條ノ式ヲ履行シ審判スルコト左ノ如シ
上告ノ趣旨ハ原判决カ第二ノ所爲トシテ認メラレタル住所氏名詐稱ノ事實ニ付テハ其行爲ノアリタル年月日ヲ明示セラレサルハ不法ナリト云フニ在リ◎依テ原判文ヲ閲スルニ住所氏名詐稱ノ所爲ニ付テハ單ニ「前項ニ示シタル地所抵當ノ登記ヲ受クルニ當リ」トノミアリテ其前項ニハ被告カ被害者本間善四郎ヘ交付スヘキ金員ヲ取得シタル年月日ヲ明治二十九年十一月三十日ノ夜ト掲記シアルモ登記ヲ受ケタル年月日ニ至テハ何等ノ記載アルコトナシ然ハ則住所氏名詐稱ノ犯時ハ果シテ何年何月ナルカ知ルニ由ナクシテ原判决ハ上告論旨ノ如ク不法ノ判决タルヲ免カルヘカラサルモノトス既ニ此點ニ付破毀スヘキモノト認ムル上ハ其他ノ論旨ニ對シ一々説明ヲ要セス
右ノ理由ニ付刑事訴訟法第二百八十六條ニ從ヒ原判决ヲ破毀シ更ニ審判ヲ爲サシムル爲メ本件ヲ宮城控訴院ヘ移スモノナリ
明治三十年五月三十一日大審院第一刑事部公廷ニ於テ檢事岩田武儀立會宣告ス
