取引所法違犯ノ件
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大審院刑事判決録（刑録）1輯2巻216頁
明治二十八年第八三〇號
明治二十八年九月三十日宣告
◎判决要旨
上告申立書ハ大審院ニ提出スヘキモノニアラス
（參照）上告申立ノ期間ハ判决言渡アリタル日ヨリ三日トス 刑事訴訟法第＄二百七十一條上告ヲ爲スニハ其申立書ヲ原裁判所ニ差出シ且其申立ヲ爲シタル日ヨリ五日内ニ趣意書ヲ差出ス可シ 同法第二百七＄十三條一項
第一審 長野地方裁判所上田支部
第二審 東京控訴院
被告人 長井芳太郎 朝倉萬兵衛 峯尾新作 竹内傳五郎 大澤與三郎 宮島三平 清水〆作 熊谷澤治
右取引所法違犯被告事件ニ付明治二十八年五月三十一日東京控訴院ニ於テ被告ノ控訴ヲ審理シタル末長野地方裁判所上田支部ニ於テ言渡シタル被告與三郎澤治傳五郎ニ對スル判决ハ之ヲ取消シ更ニ被告與三郎澤治傳五郎ヲ各罰金六十圓ニ處ス押収ノ帳簿ハ悉皆各差出人ニ還附ス又同支部ニ於テ被告新作ヲ罰金八十圓ニ處シ被告芳太郎萬兵衛三平〆作ヲ各罰金六十圓ニ處ス押収ノ帳簿ハ各差出人ニ還附スト言渡シタル判决ハ相當ニシテ右被告新作等ノ控訴ハ其理由ナキニ付之ヲ棄却スト言渡シタル判决ニ對シ被告等ハ上告ヲ爲シタリ
大審院ニ於テ刑事訴訟法第二百八十三條ノ定式ヲ履行シ審判スルコト左ノ如シ
本案被告等ノ上告ハ明治二十八年六月三日即チ上告申立ノ期間内ニ其申立書ヲ原院ニ差出サスシテ誤テ直チニ本院ニ差出シタルヨリ本院書記課ニ於テ其翌四日右上告申立書ヲ原院書記課ニ移送シタルモノナレハ原院ノ判决言渡アリタル日即チ明治二十八年五月三十一日ヨリ起算スルニ原院ニ於テ上告申立書ヲ受理シタルハ其期限外ニ係ルモノナリ然ラハ則刑事訴訟法第二百七十一條ニ上告申立ノ期間ハ判决言渡アリタル日ヨリ三日トストアリ又同第二百七十三條ニ上告ヲ爲スニハ其申立書ヲ原裁判所ニ差出シ云々トアルニ依レハ上告申立ノ期間内ニ其申立書ヲ原裁判所ニ差出サヽル可カラサルモノナレハ縱令誤テ其期間内ニ上告申立書ヲ本院ニ差出スモ之ヲ以テ右申立ノ効アルモノト認ムルコトヲ得ス故ニ原院ニ於テ上告申立書ヲ受理シタルノ日其期間外ニ渉リタル上ハ即チ不適法ノ上告ナリトス
右ノ理由ナルヲ以テ刑事訴訟法第二百八十五條ニ依リ本案ノ上告ハ之ヲ棄却ス
但上告豫納金ハ明治十九年勅令第四十六號ニ依リ各其半額ヲ沒収ス
明治二十八年九月三十日大審院第一刑事部公廷ニ於テ檢事安居修藏立會宣告ス
