雑報
◎佛國刑法の修正法律
前世紀の初葉に制定せられ文明諸國の刑罰法規に違大なる影響を及ほしたりし佛國刑法は彼國社會の情勢と文運の發展とに迫まられ次第に改刪増減を受けつゝあることは少しく泰西法治の趨勢に注目する者の皆知る所なり近着法令全集の所載に係る三法律は何れも同刑法典中の條項を修正せるものに屬す左に全文を譯載して讀者の參考に供すへし
(1)千九百一年十二月五日の法律
該法律は刑法第三百五十七條に一項を附加し未成年、離婚、別居、監護、引渡、畧取及刑罰に關係を有する規定にして條文は僅に一ケ條あるのみ左の如し
刑法第三百五十七條に左の一項を加ふ
別刈又は離婚の訴訟に際し又は千八百八十九年八月二十四日の法律及千八百九十八年四月十九日の法律に規定せる場合には假又は確定の裁判に依り未成年者の監護を定めたる場合に於て該未成年者の父又は母にして之を有權者に引渡さす又は受託者の手より若くは受託者か之を安置したる場所なり之を畧取又は隱匿したる時は詐欺若くは暴行を加へたると否とを問はす一月以上一年以下の禁錮及十六法以上五千法以下の罸金に處す被告人親權喪失の宣告を受けたるときは禁錮は三年に延長せらるへし
(2) 千九百一年十一月二十一日の法律
該法律は刑法第三百條及第三百二條を修正せるものにして嬰兒殺、定義及刑罸に關す曰く
刑法第三百條及第三百二條は左の如く修正す
第三百條 嬰兒殺とは嬰兒を殺害するを云ふ
第三百二條 殺人、殺親及毒殺の罪を犯したる者は死刑に處す但し殺親罪に關する第十三條の特別規定の適用を妨けす
嬰兒殺正犯又は從犯たる母は正犯の場合に於ては無期徒刑に處し從犯の場合に趣摯は有期徒刑に處す但し此規定は他の共犯又は從犯に其適用を及ほさす
(3) 千九百一年七月三十一日の法律
該法律は刑法第四百六十三條及千八百九十一年三月二十六日の法律第一條の適用を海上漁業并に航海中に犯されたる輕罪違警罪に及ほさんことを目的とするものにして其施行區域は新にアルチェリー、其他の殖民地を包含すへき旨を規定せり(修文省畧)