文苑
◎落椿
鳴ききさふ棚田山田の蛙哉 雫
島原に近く住みけり春の雨 西男
鯉を釣る百本杭や春の雨 失名
辻占の待てと來ぬ夜や春の雨 洒石
新らしき蛇目匂ふや春の雨 苔花
春雨や既に忘れし猫の戀 麥人
悉く蕾のかたき椿かな 南嶽
雨に暗き庭の小隅や落椿 苔花
古草や蓬か中の蕗の臺 松風
姐に〓木を載せて〓槃哉 麥人
◎落椿
順番の隣にせまる繪踏かな 露葉
其中に跛をかしき繪踏哉 苔花
摘草や芝生の上の包もの 靄人
摘草の遠くに唄ふ妹哉 露葉
摘草に夕風寒き堤かな 大羽
摘草や落日遠き人の影 麥人
蛙ないて門邊の柳月細し 大羽
川端の柳にとまる雀かな 春堂
永き日を上野の山に遊ふ哉 司郎
蛤を三つ竝へて春邊かな 麥人
◎落椿
あとさきの考なしに飛ふ蛙 いと子
赤椿白椿と絲につなきけり 松風
鎌倉に遠足するや日の永き 春堂
蕗の臺の若き早蕨の辛き世ぞ 麥人
薫さへ若木なればの白梅か 活東
ぶらこゝや見上け見下す犬の貌 失名
摘草の四五人霞む野面哉 塵山
摘草や道潅山の晝の月 望東
繪を踏んでそら怖しき夜なりけり 西男
一つよりなくて止みぬる蕗臺 麥人
◎交雜集
船人の艀よぶなり朧月 無爲庵
おぼろおぼろ船の衝突の騷き哉 同
嫁入の提燈行くや春の宵 同
朧夜や煩惱の犬狂ひけり 同
春雨や昔床しき蛇の目傘 孤月
夜櫻や有情無情の車止 同
落花紛々劒士勝負を奔ぶ 同
山門を出れば宇治の茶摘哉 同
雀子や小坊主叱る大坊主 無爲庵
來る人も行く人もたゞ長閑也 同
花に背く療病院や土鍋粥 同
夜櫻や店清掻きも亂れぬる 孤月
啜込む蕎麥やの門や花の雨 同
諸行無常落花吊ふ晩の鐘 同