判决例

◎地代増額請求控訴事件
控訴人東京市京橋區南八丁堀二丁目三番地々先中井庄助控訴代理人辯護士山田喜之助片山藤平の二氏被控訴人同市日本橋區本材木町二丁目四番地坪田五兵衛訴訟代理人辯護士鈴木升藏氏間地代増額請求控訴事件に付き東京控訴院民事第一部裁判長遠藤忠次判事齋藤十一郎鈴木喜三郎平野正富松原新彌の五氏は左の如く判决せり
(主文)明治三十四年三月二十三日東京地方裁判所か言渡したる第一審判决を左の如く變更す
被告訴人は控訴人の貸與したる日本橋區本材木町二丁目四番地の内宅地五十三坪八合八勺二才の地代金一ケ月金拾壹圓八拾五錢四厘宛を明治三十二年十二月より支拂ふべし訴訟費用は第一審及本訴分共總て被控訴人の負擔とす
(事實)控訴代理人は第一審判决の全部を取消し被控訴人は控訴人の貸與したる日本橋區本材木町二丁目四番地の内宅地五拾三坪八合八夕二才の地代金壹ケ月金拾壹圓八拾五錢四厘宛を明治三十二年十二月より支拂ひ且訴訟費用を全部負擔すべき旨の判决を請ふと申立て被控訴代理人は控訴の棄却を求と云其他雙方の供述は第一審判决に掲示する所と同一なり
(理由)控訴人か證據として提出し被控訴人か其成立に認めたる甲第一號證第揃には「第三項の地所に掛るべき地租并に地方税區費其他公けの費用等相増したる時は勿論地位實價の騰りたる時は隣地に比較して些少減額を爲し借地料を増加せらるヽも異議なき旨定めたり」とあるに依りて之を觀れば本件地所の公課又は價額の増加したるときは近隣の借地料に比準して少許の減額を爲すを條件とし控訴人一方の意思表示を以て其借地料を増額することを得べき旨の契約當事者間に成立したること明白にして控訴人か該地所に付き有する權利の地上權なると將た賃借權なるとは右借地料増額の權利の有無に何等の關係する所なきを以て其性質を判斷するの要なし而して明治三十二年度に於て本件地所の租税及ひ價格の増加したること并に明治三十二年十二月中約定に基き借地料の増額を爲すの意思を控訴人に通告したる事實は參考の爲め訊問したる齊藤半内の供述に依りて之を認むべく又控訴人の請求する増額借地料は一坪に付き金貳拾貳錢の割合にして鑑定人萩原榛太郎春日源八の鑑定に參照し前示甲第一號證の約旨に協ひたる相當の額と認む故に控訴人の請求は正當にして控訴は理由ありと認定す是れ主文の如く判决する所以なり(十二月二日判决言渡)