大審院判决摘要録

◎自己の所有物と雖も已に他へ典物として交付したるものと騙取するは詐欺取財罪を構成す
(明治三十四年(れ)第八七五號同六月十八日第二刑事部判决)
(判决理由)設令自己の所有物と雖も已に他へ典物として交付したるものを騙取するに於ては詐欺取財罪を構成するものなり何となれば刑法第三百九十條には單に財物若くは證書類を騙取したる者は云々とありて必しも他人の所有に屬する財物若くは證書類なることを要するものと限定したるに非ず故に縱令自己の所有物と雖も本件の如く既に其占有の他人に屬したる場合に在て之を騙取するに於ては同條の制裁を免かれざるものなればなり故に原院が本件に付き同條を適用したるは不法にあらず