判决例

◎親族會决議に對する不服事件
原告東京市淺草區向柳原町一丁目三番地山崎トミより被告東京市牛込區新小川町二丁目十四番地宮田友吉同市同區赤城下町三十三番地長谷川逸民同市麹町區元園町六番地奧野弦の三名に係る明治三十四年(タ)第五五號親族會决議に對する不服事件に付き東京地方裁判所第一民事部裁判長岩田一郎判事水原親次北條元篤の三氏は判决を爲すこと左の如し
(主文)原告の訴を却下す訴訟費用は被告の負擔とす
(事實)原告は一定の申立として被告が吉田チカ死亡跡家督相續人に吉田カヨを選定したる親族會の决議は無效なり訴訟費用は被告の負擔とすとの判决を求むと申立てたり其事實として福岡縣京都郡黒田村大字下黒田村二千百二十三番地吉田チカは明治三十三年十月十八日死亡し相續人なきを以て被告長谷川逸民より行事區裁判所に親族會員選定及び親族會招集の申請を爲し被告三名は親族會員に選定せられたるも被告等は右區裁判所の决定に依りて指定せられたる招集の場所則ち同裁判所管内に於て親族會を開かずして隱かに東京市牛込區赤城下町被告長谷川逸民宅に於て之を開き相續人選定の决議を爲したるは不當にして其决議は無效なり仍て民法第九百五十一條に基き本訴を提起したりと供述せり各被告は原告の請求の棄却を求めたり
(理由)本件は親族會の决議に對して不服を訴ふるに在り民法第九百五十一條には此不服を訴ふるには裁判所に如何なる請求を爲すべきものなるやを規定せずと雖も原告の請求する如く决議は無效なりと曰ふ判决を求むることは不服の訴に於て許すべからず何となれば假りに其决議か法律上無效のものなりとするも裁判所が其决議の存在を廢棄すべき行爲を爲すに非ざれば不服の訴の目的を達すること能はざるを以て本件の請求の如きは法律の許ざる所なりと解釋するを至當とすればなりとの理由を以て主文の如く判决す(四月廿四日判决言渡)