肖像小伝

北條直方君
君字は方大鴎所又右鴎と號す、慶應二年九月江戸に生る父名は利直舊幕士たり、幼にして漢學を島田篁村に學ぶ長じて文部省官費生となり外國語學校に入り清國語に通ず該地に留ること數年彼地韻流名士の間に往來し詩名頗る高し、歸朝して宮城裁判所に出仕ず、後東京に轉じ東京控訴院書記長に任し高等官六等正七位に敍ず其書記長に就職するや、爾來英意書神事務の改良を圖り、年少有爲の俊才を擧げ及び公私の便利を企つる等吏務に於て又幹練の聞あり、緒餘又繪畫篆刻に精し、曾て相駿視巡途上、汽車中春畝侯に會す、歡談僅かに一驛を過ぎて一律己に成り侯に呈す侯其捷才を稱せりと云ふ、其著す所北清見聞録、海外鴻泥、函舘竹枝、九梅草堂詩等數篇あり