雑報
◎石月辯護士の談片
一時小説文壇に雄飛せられし忍月石橋君今や長崎に辯護士を職とせられ久しくその消息を得ざりしに、頃日上告陳述の用務を以て上京し崎陽法界の寂寥を感ぜるは民事部にて磯谷幸次郎氏刑事部にて柳川勝二氏の如き二明法官をして東京に轉補せしめられたるに在り又二法官が民刑擔當の適任たりしは何人も首肯する所なりしに聞處に依れば磯谷判事は東京に於て刑事部柳川判事は同民事部を擔任せらるゝとか其適否果して如何にや、松室控訴院檢事長の如きは藤川檢事轉職以來其の空位を補職せらるゝ劇衝にも屈せず該博の佛法猶足れりとせず獨逸語研究の傍最近同刑事訴訟法に關する著書を反譯せしめ頻りに研鑽せらるゝが如き多々益々壯なりと云ふべし云々而して君自からは法學上感ずる所あれば稿を長崎新報に寄せて以て同紙上に意見を發表しつゝありしが今後法律新聞へも同樣所感に隨つて奇稿を誓ふべしと語られたり、君例に依て愼談要話踵て起り健康舊に幾倍を見受く、今後君の流暢なる筆は本紙上に偉彩ある法理論として顯はるべし