相續權確認及財産保全請求及家督相續後見確認反訴ノ件

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大審院民事判決録（民録）2輯3巻5頁

上告第二点はは@069403;は単に無縁の他家より貰受けたるにあらず。 亡戸主かきが其母方の血統を重んし同人を迎へ内蔵之助と共に相続者と為したること甲第一号と遺言証第二条に明記する所にして又該条と同第一条とを参照すればはなを戸籍上縁女と記入せしは成長の上内蔵之助と娶はずに際し法律上差支を生ぜしめざる為にして其実内蔵之助と共に長尾家を相続すべき養女と為したるに外ならざることも明白なる所なり。 而して[しこうして]甲第一号証第二条には不幸内蔵之助相続しはなと折合宜しからず。 離縁するの不得己の至ることありとするも尚ほ一千円の財産を分与す[くみす]べきことを定めあるに拠ればかきがはなに重きを置きたるは明白なる所なるにはなは離縁せらるる事なくかき内蔵之助共に死亡したる次第なれば長尾家に在りてははなの外一人の生存者なきものにしてはなが同家の相続権を有するは論なき所なるに原院は凡そ戸主死亡したるときは残存の家族に於て他の親族有無に関らず相続すべきこと普通の順序なるを認めながら単に戸籍面に縁女と記載ある行政手続上の文字を執で甲第一号証遺言証に明記したる事実及之に対する原被明認の事実を不問に附し「はなは家族の身分上より生ずる権能に依るの相続人なりとの事を以て他の近親に先たち其相続を為すべき資格あるものと云ふ[いう]を得ず。」と説明し以て上告者の請求を排斥したり。 是れ重要なる事実を遺脱し我邦相続上普通の例規に違反したる不法の判決なりと云ふ[いう]に在り案するに戸主死亡して家族残存する場合に在で他に特別なる事由なき限りは其家族中の者に於て相続人たる可きは普通の順序なり。 而して[しこうして]はなが戸籍上縁女とあるは他日内蔵之助と結婚の際法律上生すべき支障を予防したるに過ぎずして其実長尾家の養女たるに外ならず。 然らば戸主内蔵之助死亡し其家族中他に相続すべき近親なき以上ははなに於て其死跡を相続すべきは当然の順序なるに原院が戸籍上縁女とあるの故を以て長尾家を相続すべき資格なきものなりと判定し上告人の請求を斥けたるは不当なりとす。』同

第八点は準備書類中被上告人の反訴状を見るに被上告人は長尾喜三郎の後見人にあらず。 一己人の資格を以て訴訟を為しながら後見人たるものの為すべき幼者喜三郎の家督相続及被上告人の後見確認の反訴を為したるは全く代理の欠欠なるに原院は之に対し補正は勿論何等の説明をも為さざるは違法なりと云ふ[いう]に在るも被上告人は幼者長尾喜三郎の実父なれば其実子たる喜三郎の利益を保護する為め本件訴訟の被告と為り、且、之に対し反訴を提出したるは相当なるを以て本論旨は上告適法の理由なし。

上来弁明の理由に依り民事訴訟法第四百四十七条第一項に従ひ原判決を破毀し、且、本件に於ては己に原院の確定したる事実に依り裁判を為すに熟するを以て民事訴訟法第四百五十一条第一号に従ひ本院に於て直ちに主文の如く判決するものなり。